アメリカのスピーチ文化を理解するよき材料

この演説は、リンカーンのゲティスバーグ演説(http://president.jp/articles/-/20724)を下敷きにしています。「自由の祝福」というテーマも、共産主義対自由主義の戦いの中での言葉です。前半に出てくる「神の手から生まれた信念」という考え方も同じです。

蔭山洋介●コムニス代表。企業経営者や政治家、講師などに向け、講演、スピーチ、プレゼン指導やブランド戦略のサポートにあたる。著書に『スピーチライター 言葉で世界を変える仕事』『パブリックスピーキング』がある。

ケネディのスピーチから学ぶべきは、もっとも重要なことを、どのように伝えるかという点です。言葉、表情、身振り、姿勢、振る舞いすべてを駆使し、バーバル、ノンバーバルの両面で、エネルギーを伝えています。スピーチの最初は、抑制しながらゆっくり始め、聴く人だれもが否定しない言葉を並べながら、距離をとって聴衆を巻き込んでいきます。徐々にエネルギーを加えていき、この演説のピーク、「国家があなたに何をしてくれるかではなくて、あなたが国家に何をできるか」のときには、怒鳴り声に近い声で、普通なら決してイエスと言わないようなこと、たとえば「国家のために死んでくれ」ということに対しても、喜んでイエスと言う雰囲気を醸成していきます。

ビジネス上のスピーチで総じて思うのは、「パワー不足」ということ。スピーチは言葉に意識が向きがちですが、歌やダンスに近いのです。ケネディの話し方はそれを教えてくれます。

(野崎稚恵=構成、翻訳 葛西亜理沙=撮影 写真=アフロ)
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