私と飲んでいるときに、空のグラスはありえません!

かしこまった席でなくとも、数人の仕事仲間と飲むシチュエーションはよくあること。こういった場を生かして取引先と親密な関係になっておくことが、後々の仕事に響いてくるのだ。「週に3回から5回は仕事相手と飲みます」と微笑むアサヒビールの立野さんの気遣いは、凄い。
アサヒビール 立野陽之さん

盛り上げ上手が鎬を削るアサヒビールの営業の中でも、その気遣いはトップクラスと囁かれる「接待の猛者」。立野陽之さんの仕切り方はまさにプロというべき、素晴らしいものだった。

「初めての相手は接待というと萎縮されるので『プロジェクト成功のお祝いを』とか『繁盛店の視察に行きましょう』など仕事を絡めて声をかけます」

その1回目で、相手の情報をこれでもかというほど頭に叩き込む。食べものの嗜好、雰囲気、お酒のペース、何杯目に何を注文したか、誕生日や家族構成……。その情報を次回からきっちり生かす。情報を基に好みの店を選び、「○○さんは2杯目からハイボールですよね」と飲み方のパターンを先に読んでオーダーする。誕生日にはケーキで祝福することも珍しくない。

「『そんなに気を使わないで』と言われるぐらいが丁度いい。一定のサービスを提供できている証明ですから」

酒好きにはとことん付き合う。何度も会うより一回朝まで付き合うほうが記憶に残るから。そうしているうちに、相手との距離は確実に縮まるという。

「実は接待で契約を取った、というのはそれほどないんです。でも、酒の席だからこそ本音を語ってもらえるし、少々の失敗で怒られなくなりました」

本来は人見知りで「妻の友達が遊びに来ても、挨拶もできない」。そんな彼だからこそ、人一倍の気遣いが可能なのかもしれない。