朝礼、年功序列、制服、会社主催の慰安旅行や運動会……、どれも「日本株式会社」の慣行だった。ところがバブル崩壊後、リストラの嵐が吹き荒れ、慣行のいくつかは姿を消していった。そうしたなか、今も形を変えて生き残っているのが朝礼だという。日本の組織は朝礼をどうやって日々の仕事に生かしているのか。私はさまざまな朝礼の現場に足を運び、実態を解析することにした。

リッツ・カールトンは1983年に誕生したラグジュアリー・ホテルチェーンである。全世界に63ホテル、従業員数は3万1000名。今春には、東京ミッドタウンにも日本で2軒目の同ホテルがオープンしている。そんなリッツ・カールトンは「ラインナップ」と呼ばれる始業前のミーティングで知られる。そして日本の朝礼にあたるラインナップにはユニークな特徴がいくつもある。

ラインナップには経営トップからベルボーイ、皿洗いといった現場の人間まで、すべての人間が毎日、欠かさず参加する。

朝だけではない。レストラン部門であればランチやディナーの前に行われるし、ハウスキーピングのようなシフトがある部門では、日に数回は実施される。内容も上意下達の訓示ではなく、共通の理念や価値観について従業員同士が和やかに語り合うのだ。

何より驚くのはミーティングで取り上げるテーマである。上司が適当に決めているのではなく、全世界の職場で同じテーマが取り上げられている。各ホテルにはリッツ・カールトンの本部から毎週1回、「Commitment to Quality」が送られてくる。そこにはラインナップで取り上げられる日替わりのテーマが記されている。