2016年11月25日(金)

日本酒の未来を担う!? そもそも「生もと」って何?

dancyu 2015年2月号

文・松浦達也

しっかりした味わい。ファンは生もと造りの酒をそんなふうに言います。日本酒の未来を担うのが生もと。とある蔵元はそう主張します。そもそも、生もとって何? どうしていま注目されているの? このごろ耳にするのによく知らなかった、本当のところに迫ります。

1.生もとって何?

▼江戸時代に確立された仕込み法です。明治期まではこれがスタンダードでした

「生もと」って銘柄? 「純米」みたいな種類の呼称? ラベルに書かれた「生もと」という文字を、見たことはあるけれど……。ずばり、「生もと」とは、日本酒の造り方の名前です。江戸時代に確立された造り方で、明治末期まではどの蔵元でもこの方法で酒造りをしていました。

時間も労力もかかる上、高度な技が必要だったため、もっと省力化して均一な酒が造れるようにと近代的な酒造り(山廃もと、速醸もと)が開発されると、日本中の多くの蔵から、「生もと造り」が消えました。私たちがいま飲むほとんどのお酒は「速醸もと」によるものです。しかし近年、「生もと造り」が各地で復活。伝統的でナチュラルな醸造法と深い味わいに惹かれた造り手たちが、「生もと造り」にチャレンジしています。

2.生もとってどんな味?

▼(誤)ごつごつして熟成酒っぽい(正)豊潤で力強い味

ネームバリューはあるのに、正しく理解されていない。それが生もとの切ないところ。「単に熟成した日本酒=生もとという誤解がある」(新政酒造・佐藤祐輔さん)ことに加えて、ワインバー「ピルグリム」の石井英史さんは「全体的においしかったのですが、味のバリエーションがありすぎて共通項を見つけられなかった」とその多様性がネックにもなっているよう。

では、飲み手を代表して日本酒に詳しいライターの藤田千恵子さんに決めてもらいましょう! 「いい生もとにはコクや酸味など造り手の個性が表現された、豊潤で力強い味わいと一体感があります。たとえるなら『気は優しくて力持ち』」。まずは好きな蔵元の生もとから試してみよう。

3.なぜいま注目されているの?

▼若い造り手が醸す「ニュータイプ生もと」が増えているからです!

生もと造りを手がける蔵元は増えています。本号で取り上げた中で、この数年で開始、あるいは再開した銘柄をざっと挙げても“天明”(2013年)、“松の司”“昇龍蓬莱”(ともに11年)、“大那”(10年)、“山形正宗”(09年)……。2000年以降に始めたものに“竹鶴”“奥鹿”“日置桜”“惣誉”“英”“開春”などがあります。

「冷やでも楽しめる、きれいで華やかな味わいの生もとが驚くほど増えています」(東京「朧酒店」大熊 潤さん)、「生もとの味わいのバリエーションが多彩なこと自体には、もう驚かなくなりました」(福岡「とどろき酒店」轟木 渡さん)とプロもコメント。先入観を捨てれば、生もとの世界はさらに楽しく広がるはず!

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松浦 達也