おがくずを使った粘土が大ヒット

杉谷は協力してくれるメーカーを探し、1999年にドイツのメーカーと共同で、乾燥したおがくずをプレスして固形化する装置を開発した。これにより、暖炉やバーベキュー用の「おがくず薪」を商品化することができた。エコマークも取得したが、残念ながら販売ルートを作ることができなかった。がんばったが、1年ほどで自然に消滅した。

だが、杉谷はあきらめない。圧縮するだけでは商品化に限界がある。それならば、粉末状にできないか。こうして、粉末化の装置開発に乗り出すが、思ったより難しかった。石臼のようにすりつぶせば熱で焦げてしまう。叩いて粉砕し、ふるいにかける方法も目詰まりしやすく、微細な粉が舞い上がって粉塵爆発を起こすおそれがあった。

様々な見本市や製粉工場を見て歩き、大手製粉会社の子会社が、粉砕しながら粉末を吸引する方式の装置を作っていることを知った。杉谷は「これだ!」と確信し、そのメーカーに装置開発を依頼し、おがくずをミクロン単位で粉砕することができるようになった。

問題は商品企画だ。おがくず薪と同じ失敗はできない。消臭剤や猫砂、壁材などいろいろと考えたが、販売ルートを確保できない。鉛筆の販売ルートを活かした商品は何か。そこで、生まれたのが粘土だった。粘土なら学校教材の問屋ルートで売ることができる。

子供たちが使うには無害でなければならない。そこで、おがくずに切手のりとして使われるPVAのりを混入した粘土「もくねんさん」を1年かけて開発した。2001年に国際文具・紙製品展に出展すると反響を呼び、ヒット商品となった。

その後、玉川大学芸術学部と共同で産学連携事業の認定を受け、世界初の木の絵の具「ウッドペイント」を開発した。おがくずに無害な食品用染色剤を混ぜて作ったものだ。これも2004年に発売してヒットした。

ウッドペイントはベニヤ板やコルクにも描くことができ、盛り上げれば立体的になり、後から削ることも自由だ。このユニークな特性にアーティストたちも興味を持ち、杉谷は「木彩画」と名付けて、日本とアメリカで特許を出願した。

おがくずを使った粘土「もくねんさん」が大ヒット。