「新奇性選好」がうまく機能していることは、2つの「現象」で検証することができる。

ひとつは、「もう見た?」「まだ見ていないの?」などと、「経験者」と「未経験者」の間に一種の「経験デバイド」が生まれるということ。その結果、経験者が、あたかも未経験者に対して優位に立っているような錯覚が生じる。

もうひとつは、「ネタバレ」が話題の軸になること。内容が新奇性にあふれているからこそ、それを相手に伝えてしまうことで、せっかくの楽しみが台なしになる。

「経験デバイド」と「ネタバレ」に対する関心がうまく演出できれば、その作品は、ヒットの条件である「新奇性選好」を刺激していると言える。大ヒットを夢見るすべてのビジネス・パーソンが、考えてみるべきことだろう。

大ヒットするためには、加えて、「安心感」という「着地点」も必要である。『シン・ゴジラ』で言えば、歴史あるゴジラ・シリーズであること、また、『新世紀エヴァンゲリオン』をはじめとする人気作で知られる庵野監督の作品であることが「安心感」を与えた。『君の名は。』についても、タイトルや新海監督の知名度など、さまざまな「安心感」の要素があった。

結局、新しさの刺激の後に、大きな安心がくるものがヒットすることになるが、このうち、生み出すのが比較的難しいのは新しさであろう。

新しいということは、つまり、前例がないということである。最近進化の著しい人工知能も、たくさんの前例=ビッグ・データを集めなければ、肝心の能力を発揮するための「学習」ができない。

いかに、前例のなさというブルーオーシャンの中に新しさを追い求めるか。ここに、これからのビジネスの成功を考えるうえでのヒントがある。

(写真=AFLO)
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