本当の富裕層は、見栄消費は絶対にしない
前出のハーシュは若くして(46歳で)亡くなりましたが、このpotitional goodsの考え方をコーネル大学ジョンソンスクール教授のロバート・フランクが受け継ぎつつ、別の概念・解釈を付加したのです。
フランクは、positional goodsを社会的希少性ゆえに富裕層にしか手にはいらないものとするのではなく、「他人との比較によってはじめて満足できる地位財」であると定義しました。これが、現在の地位財という言葉のはじまりになっています。
この地位財という言葉・意味に関して私が丁寧に解説したいと思っているのは、本欄のテーマである「一般のビジネスパーソンが理詰めで富裕層になる」ということに深く関連している事柄だと考えるからです。
蓄財のテーマなのに消費について語る理由は、お金の作り方と同時に「正しいお金の使い方」を考えることが富裕層になるためには極めて大切です。
次回以降、このロバート・フランクの「地位財」発見までの話を掘り下げますが、今回はその前に、冒頭で紹介した調査(「人はお金持ちになりたいのではなく、他人よりお金持ちでいたいだけだ」)の中で触れていない部分について少しだけ述べましょう。
私は超高額所得者となった今、「お金の量だけで、幸せにはなれない。お金でハッピーを買うことはできない」と実感しています。では、何が幸福につながっていて、何にお金を使えばいいのか。その質問のヒントとなる調査結果が出ているのです。
注目すべきは、「休暇」についての人の意識を探る調査項目です。
▼1と2のどちらかの世界に住むとしてあなたはどちらを選びますか?
1. 自分は2週間の休暇で他のすべての人は1週間の休暇の世界
2. 自分は4週間の休暇で他のすべての人は8週間の休暇の世界
冒頭で紹介したように「収入」に関しては自分が相対的に高いほうを過半数以上の人が選びました。そして、この「自分が相対的に高いほうを選ぶ」という傾向は、「身体的魅力」「IQの高さ」「学歴」といった項目でも同じでした。
ところが、上記のように「休暇」に関して質問すると……。
18%の人しか1(自分が相対的に高い)を選ばず、大半の人は2を選択しました。休暇に関しては相対的な量よりも、絶対的な量のほうが選ばれたのです。
この結果が暗示すること。それは、私なりの解釈をすれば「正しいお金の使い方」です。
他人との比較なしにそれ自体として満足を得られるものにお金を配分していくことが不毛な競争的消費に巻き込まれないためにも良さそうですし、資産形成にも資する。私はそう考えます。
消費活動を一切行わずに資産を形成するだけの人はいません。
人は資産を形成しながらも消費活動をおこないますので、どのような財に効率的に消費活動を集中するかが資産形成に影響を与えます。こうしたお金に関する「哲学」を自分なりに磨くことで、日々のお金の使い方、消費のしかたを洗練させることができるのです。
*筆者・金森重樹氏にお金に関する悩み相談をしたい方は、下記URLのフォームにご記入ください。
*受け付けた質問の一部に関して、金森氏が記事内で回答する場合があります。なお、金森氏より質問者に連絡することは一切ございませんし、営業目的に利用することもございません(記入フォームにアドレスなど連絡先の書き込み欄はありません)。
https://docs.google.com/forms/d/1QL5Ik3u31anl6QRjpkUdgZw7NqKS4EpmVd3cIUVz82s/viewform