自分の心を掌握するために
『道をひらく』
松下幸之助/PHP研究所

500万部以上売れ、長年読み続けられている人生の教科書。121編の短文で構成され、人生やビジネスの心構えが説かれる。

「人の心を動かすことばかり考えていると、自分の心が疎かになりがち。そこで時々、自分の心を律するために読みたい一冊です」(土井さん)

「素直さを失ったとき、逆境は卑屈を生み、順境は自惚を生む」「その境涯に素直に生きるがよい」など、人生においては素直さ、謙虚さを大切にすることが重要と提唱。

仕事面では、「些細と思われること、平凡と思われることも、おろそかにしない心がけ」「命を下す前に、まず人の言うことに耳をかたむけること」と、小さな心配りの必要性が語られる。

「『頑張れば報われる』という訓話が基本。読みやすく、シンプルな内容ゆえ、ヒントも多い気がします」(土井さん)

経済学から人間を学ぶ
『経済は感情で動く』
マッテオ・モッテルリーニ/紀伊國屋書店

行動経済学とは、「経済の主体であるところの人間の行動、その判断と選択に心理学から光を当てる」学問で、その面白い部分を紹介。土井さんいわく「経済活動や交渉など、あらゆる場面で役立つ人間心理がたくさん書かれていて、『影響力の武器』に通じる一冊」。

Q&A形式で読みやすく、先行投資額が巨大だとそれまでの投資がムダになるのを恐れて、未来予測を誤る「コンコルドの誤謬」、最初に印象に残った数字やものがその後の判断に影響を及ぼす「アンカリング効果」、経験を評価するとき、苦痛のピークと最後の時間によって判断される「ピーク・エンドの法則」など、行動経済学の理論が学べる。読んで気づくのは、人は必ずしも合理性のある行動を取らないということ。「経済学」であるが「人間学」としても読めるだろう。

インセンティブによる誘導術
『ヤバい経済学』
スティーヴン・D・レヴィット、スティーヴン・J・ダブナー/東洋経済新報社

保育園で遅刻を繰り返す母親に罰金制度を設けたところ、逆に遅刻が増えたのはなぜか..。「インセンティブは現代の日常の礎である」「人間はインセンティブで動く」の考えのもと、インセンティブ(誘引)をキーワードに、世間の常識や問題を解明していく。

著者によれば、人間を動かすのは、経済的、社会的、道徳的という3つのインセンティブであり、冒頭の問題は遅れて感じる罪の意識(道徳的)を罰金(経済的)に置き換えたことで、罪の意識を失ってしまったと分析する。

そのほかにも、「アメリカの犯罪率が激減した理由は中絶の合法化」「800長報道の後、7勝7敗で千秋楽を迎えた力士の勝率は下がって、平均の5割に戻る」など、世の中のダークサイドの事例を参考に、インセンティブの仕組みや設定の仕方が理解できる。

(文= 鈴木 工 撮影=佐藤新也)
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