目指すは「借主・貸主・世の中」の三方良し

同社は、不動産オーナーや金融機関、通信事業者などと協力し、ベンチャー企業の成長を支援する取り組みも行っている。その一つが「出世ビルプロジェクト」だ。「保証金半額くん」によって移転の初期費用を抑えられるほか、NTTドコモの無線LAN、ITソフトウェア企業オービックビジネスコンサルタント(OBC)の会計ソフト、第一勧業信用組合による資金相談対応などの、成長支援サービスが受けられるオフィスビルで、「入居した企業が次々に業績拡大し、増床移転をすることの多い縁起の良いビル」にすることを目指している。オフィスビルに、マーケティングの発想を取り入れた試みだ。

「アメリカのシリコンバレーでは、戦略的に有名IT企業をテナントとして入れることで、ビルそのものに付加価値を付け、『そこに入居することがステータスになる』ビル作りをしている。また、香港などでは、有名ホテルを入居させることで、ビルの『格』を上げる。日本も『ただビルを建てるだけ』では、競争に負けてしまう時代。オフィスビルにも、戦略的なマーケティングが必要だ」と豊岡氏は説く。

日本商業不動産保証にとっても、「起業支援」や「成長支援」は重要なキーワードとなっている。福岡市では、市と地元不動産管理会社、日本政策金融公庫と、創業支援共同プロジェクト「とっくに保証くんNEXT」を実施。創業5年以内の企業が福岡市内の対象ビルに移転する場合、日本商業不動産保証と保証契約を結ぶことで、保証金を最大8割減額できるほか、日本政策金融公庫の事業計画策定サポートや融資を受けられる。「少しずつ自治体や各地元大手企業と共同の取り組みが広がっている。これらは地域活性化にもつながるので、さらに積極的に進めたい」と豊岡氏は話す。

今後は、「こうした保証サービスを広め、オフィスを借りる際のスタンダードにしたい」という。それにはまず、「『日本商業不動産保証が保証しているなら、いい会社なのだろう』と言われるよう、実績を積まなくては」。その先にあるのは、さらなる地域活性化への貢献だ。豊岡氏は、「地域活性化を進めるためには、中小企業やベンチャーの成長が必須。与信によるオフィスを借りる際のサポートだけでなく、人、モノ、カネ、ノウハウなど、ベンチャー企業や中小企業が成長するうえで必要なものを、提供できるようにしたい」と将来の構想を語る。

日本商業不動産保証 代表取締役社長 豊岡順也
1973年生まれ。大学卒業後、証券会社に入社するが、父が倒れたため家業の物販会社を経営。その後、別の証券会社に入社し、株式公開引受業務に従事。企業内企業でコンサルティング会社を立ち上げ、社長に就任。同社をMBOで取得独立した後、2011年フィナンシャルギャランティを設立、2013年に現社名に変更。
(撮影=岡村隆広)
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