金融にリスクが出てこないのはおかしい

次に、経産省事務局(福本拓也産業政策局産業資金課長)から「フィンテックの指標(KPI)を作る上での意見は?」との質問があった。

翁百合氏(日本総合研究所 副理事長)は「フィンテックはネットワーク化、オープン化の上に成立しており、標準化が必要となる。また、フィンテックのどのような新しいサービスが登場してくるかも重要な指標となる」とし、ここでの議論として「金融を議論しているのにリスクについての話題がないことはおかしい」との重要な指摘があった。

さらに強烈な反論を展開したのが増島雅和氏(金融革新同友会FINOBATORS 代表理事兼 森・濱田松本法律事務所パートナー)だ。「ここで語られていないこと、あるいは意図的に隠されていることが法律的に重要なのでは」と切り出した。

「我々は、フィンテックはユーザー・ニーズからスタートしようと始めており、そのサービスの所管官庁がどこかなどは、どうでもよい。例えば金融庁は決済業務について横断的な規制を行うとしているが、その中になぜクレジットカードが含まれないのか?」と金融庁・経産省にとっては耳の痛い指摘が行われた。さらに、現実に金融業を展開している立場から太田純氏(三井住友銀行専務執行役員)はKPIの設定について、異を唱えた。「KPIに縛られて、『ほらここまでできていないのではないか』と、KPIの設定はかえって各民間企業の自由な発想を縛る面もあるのではないか」と述べた。

また、本人確認の重要性について堀氏は「非対面取引でフィンテックがよりスムーズに普及するには、本人確認が容易化することが重要。銀行口座を持っていない人は少ないので、金融機関の本人確認を汎用的に使用できないか?あるいは携帯電話会社の本人確認をAPIで共有する仕組み作りなどを考えることが大切だ」とした。

【関連記事】
Moneytree「モバイルファースト」で実現した新サービスとは
FinTechはバブルなのか? 本物なのか?
なぜAmazon、楽天の金融ビジネスは急成長するのか
安全で便利な生体認証FinTech「手ぶら決済」の実力
なぜFinTechはアメリカで爆発的に成長するのか