世界の自動車産業のなかで存在感のある提携

しかし、グループの日野自動車、ダイハツの2社に、出資している富士重工業、いすゞ自動車、マツダに加えて、スズキも取り込んだ“大トヨタ圏”が形成できれば、世界トップを争うVW、米ゼネラル・モーターズ(GM)を大きく引き離せるメリットは大きい。それだけに、世界企業のトヨタと、インドと国内の軽自動車市場で盟主の地位を築いてきたスズキとの組み合わせは、その発展性からみて世界の自動車産業のなかで存在感のある提携に映る。

両社の提携については、ともに現在の静岡県の遠州が発祥の地で、創業家経営という共通項があり、親和性も高い。さらに、かつてスズキが経営危機に陥った際に、トヨタが救済した縁も取り持つ。鈴木会長といえば、ことあるごとに「うちは中小企業」と自認しながら、規模で遙かに上回るGM、VWと資本提携し、生きながらえてきた歴史がある。

しかも、両社とは互角に対峙し、自主独立路線を守りつつ、国内の軽自動車、さらにインドの市場を牽引してきたしたたかさが際立つ。その鈴木会長は高齢とはいえ、引き続き経営に強い意欲をみせており、次の一手としてトヨタとの提携を拠り所に自主独立路線を維持するとしても何ら不思議はない。

その意味で、提携協議入りでトヨタから得る成果は、鈴木会長がこれからのスズキに残す生き残りを賭けた「レガシー」であるに違いない。それを生かすも殺すも、鈴木会長の長男で後継者となった鈴木俊宏社長をはじめ現経営陣に託される課題でもある。トヨタにしても、章男社長が自ら認める「アライアンス(提携)が苦手な会社」から脱し、明確な成果を出すことが求められる。