ブランド価値を飛躍的に高めた五つ星ホテルの採用

2007年に別件で知り合った東京のラグジュアリーホテルに対してみかんジュースの採用を提案してみたものの、外資系のためみかんジュースは扱わないと断れる。だがそれでも諦めることなく、1カ月かけて殺菌温度や搾り方を工夫し、ピンクグレープジュースを完成させて再び持込み、成約につなげた。

アマン東京が採用したオリジナルジュース。

これをきっかけにホテル側の要望に応え、地物の三宝柑や温州みかんに加え、ブラッドオレンジやバレンシアオレンジ、不知火(みかんの品種名)、伊予柑など10種類以上のジュースをつくるようになった。

生産する量は従来1回200リットルからだったが、ラグジュアリーホテルとの取引により、必要な分だけ新鮮なジュースを提供できるように、8分の1の最低25リットルからつくれる生産体制に変更した。

谷井農園は名だたる五つ星のラグジュアリーホテルと取引しているが、同じみかんを使用したジュースでも、ホテルごとにすべて味を変えている。東南アジアの利用者が多いホテルでは甘味を強くし、別のホテルでは酸味を強く、さらにアマン東京ではレストランで朝食時に食事と共に飲んでもらうジュースと、ルームサービスで飲んでもらうものとは、微妙に味を変えている。ルームサービス用はホテル自慢のショコラティエがつくるチョコレートと合う様に味を調整するという具合だ。こうした対応が可能なのは、何種類もの甘味や酸味に対応するため時間差でみかんを収穫し保管しているからだ。

こうした地道な取組みによって高い評価を得た同社は、自ら営業しなくてもラグジュアリーホテルはもとよりミシュランの三つ星店からも注文が舞い込む企業に成長し、さらに三越伊勢丹がクアラルンプールとパリに新たに出店するThe Japan Storeのジュース部門で日本を代表するという評価を得て、谷井農園の商品が採用されている。