個人を対象に独自の通信販売を行う

1985年当時有田エリアで農家が生産するみかんは農協が買い上げ、その姿形や大きさから等級と階級に選別されていた。そのため農協の規格に合致した外見が綺麗なみかんをつくることに、農家は注力していた。

2000年、アメリカ製のジュース搾り機を導入した。

みかんの花にはハチが集まり、蜜を吸いに来た時に小さな傷をつける。この傷は美味しいみかんの証なのだが、市場では「見た目が悪い」という理由で売れない。こうした市場の対応に疑問を持ち、同社は販路として個人通販の道を選び、多少形が悪くても美味しいみかんを個人顧客に提供していった。

当初細々と始めた通信販売も、美味しいみかんに魅了される顧客が次第に増え、谷井農園の通信販売を利用する顧客は現在1万4000人を超えている。

7割の売れないみかんを「売れる商品」にする取組み

果実の場合、みかんの市場価格は1キロあたり100円前後、高くても10倍の1000円程度だ。それがジュースの原料になるランクだと1キロあたり10円が相場だが、ジュースに加工すると2400円で販売することが可能で、240倍の価格になる。

谷井農園では生食用として販売できる美味しいみかんは約3割に過ぎず、残りの7割は加工用として安価に売るか廃棄していた。谷井氏は20年程前に、生食向きではないみかんもジュースにならできるのではないかと考え、研究のため市販されているフルーツジュースを数多く試してみた。するとどのジュースも味が似通っており、そうなる理由はどこも大手メーカーの機械を使い同じ熱殺菌方法で処理しているからであることに気付いた。

アメリカ滞在中に口にしたジュースが美味しかったことを思い出し、2000年にアメリカ製のジュース搾り機を導入した。この機械は特許の関係で販売はされないため、年間のリース料を支払っている。

みかん以外のジュースも手掛けようとマンゴーに挑戦したところ、時間の経過によりジュースが発酵して瓶内でガスが発生するという事故が生じた。

これまでの製造方法ではマンゴーの酵素を処理できないことがわかり、自前の熱殺菌方法で瓶詰めができる機械を完成させ、厄介なマンゴーの発酵を抑えて濃厚なジュースをつくるノウハウを得た。この取組みにより、どんな果汁でも美味しいジュースにすることが可能になった。