「トランプ大統領」で株価はどうなる?

結局のところ、外需、内需とも思わしくない状況が続き、需要不足から各社は設備投資を抑制する可能性が高い。しばらくの間、こうした縮小均衡的な状況が続くことになるだろう。

これだけ悪材料が揃っているのだから、株価は大幅に下落するのかというと、そうはならないかもしれない。その理由はやはり需給にある。

主要なプレーヤーだった外国人投資家が撤退したことで、日本の株式市場で活発に売買できる投資主体は少なくなっている。国内投資家の中で唯一、大きな存在感を示してきたのは、公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)であった。

GPIFは安倍政権における公的年金の運用改革という旗印のもと、安全資産である国債から、一気に株式中心のリスク運用へとシフトした。13年度に約20兆円だったGPIFの日本株保有残高はすでに30兆円を超えている。GPIFにおける株式の買い入れ余力はほぼなくなりつつあり、今後、大型の買いは期待できない状況にある。

だが、GPIFは公的年金というファンドの性質上、安易に株式を売却するわけにもいかない。多少株価が下落しても、当分の間、株式を保有し続ける可能性が高いだろう。

結局のところ、日本の株式市場には積極的な売り手も買い手もいないという状況が続くことになる。

相場格言のひとつに「閑散相場に売りなし」というものがある。大きく上昇する見込みがない環境でも、売買が少ない状態であれば、あまり株価は下がらないという意味である。今の日本はまさにその状況にあるといってよい。

もし米国が比較的早い段階で追加利上げに踏み切れば、日本株にとっては多少の追い風となる。ただ、米国はあまりドル高を望んでいないので、以前のような水準まで円安が進む可能性は低いかもしれない。

円安が進まず、日本企業の業績低迷が長期化するようなら、日本株への売り圧力も徐々に強まってくるだろう。また米共和党の大統領候補トランプ氏は、利上げに反対の立場を鮮明にしており、もしトランプ氏が大統領になれば、ドル安政策を採用する可能性が一気に高まってくる。閑散相場に売りなしという状況が続くにしても、それは年内いっぱいかもしれない。

加谷珪一(かや・けいいち)

経済評論家。仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒。日経BP社、野村証券系投資ファンド運用会社を経て独立。個人投資家としても知られる。著書に『お金持ちの教科書』など。
 
(久保田正志=構成 永井 浩=撮影)
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