資金を引き出すための残虐行為の数々

ソマリアではアルシャバブ(アッシャバーブ)というアルカイダ系イスラム過激派組織が活動を続けています。過去にはケニアの首都ナイロビのショッピングモールを襲撃して60人以上を殺害したり、ホテルに車ごと突っ込んで自爆テロを行ったりと、残虐な行為を繰り返してきました。そのせいで、先日ソマリアで泊まったホテルも、土嚢を建物の前に積み上げて車に突っ込まれないよう守っていました。アルシャバブはソマリアでイスラム統治体制を敷くことを大義としていますが、末端の兵士は自分たちの強さを誇示し、近隣の住民に恐怖感を与えることに快感を見出しています。存在感を示すことで、湾岸諸国の豊かな国々から資金を引き出す目的もあります。

こういった危険な地域で取材をする際に重要なのは大きく3つ。1つめは「ネットワーク」、簡単に言えば人間関係です。それ次第で命の危険にさらされます。たとえば今回のソマリア取材では、現地の20年来の知人Aさんに「こんな取材がしたい」と話し、彼がBさんに、BさんがCさんに……と6~7人の人間を介して内部に近い人間までたどり着きました。私はAさんをとても信頼しています。ちょっとしたお金に関して私を騙すこともありますが、長い人間関係があり、私を危険にさらすことはない。その彼が信頼して話を通したBさんだから、やはり信じられる。私は「信頼のグラデーション」と呼んでいますが、最初に話を持ちかける人間との間に強い信頼関係がないと、数人の人間を経るうちに信頼はどんどん弱く、危険は増していきます。

次に重要なのは「お金」です。身もふたもない話ですが、ソマリアでの取材には驚くほどお金がかかります。飛行機代も含め、5日間の取材で250万円ほどかかりました。安全のため、銃を持ったボディガードを6人、道を知り尽くした運転手を1人雇いましたが、それ以上に高いのが「フィクサー」や「リンクマン」と呼ばれる仲介人に支払うお金です。彼らは1日2000ドルほどを要求してきます。高いと感じても値切ってはいけません。「値切りやがって」と面白くない気持ちにさせると、大事な局面で裏切られるかもしれないからです。自分の命の値段だと思えばこそ、私は絶対に値切りません。そして、必ずその場で現金払いです。

3つめに重要なのが「直感」です。「運」と言い換えてもいいでしょう。私は、朝迎えにきた運転手を見ただけで、取材が上手くいくかどうかがわかります。彼らは質のいいボディガードとのネットワークや現地のキーパーソンとのコネを持っているので、実際に取材を左右する人物でもあります。ですが、それ以上に彼らの持つ雰囲気で安心できる。あぁ、任せられると思う。

こんなこともありました。以前、酒場で言いがかりをつけられて、50人くらいのソマリア人に追いかけられ、最終的には囲まれてしまったのです。アフリカの夜はとても暗い。そんな場面で私がしたのは、全員の目を見ることでした。すると、私に対して「可哀想だな」と感じている人が1人や2人はいるものです。そういう人を見つけたら、「助けてくれ。言いがかりなんだ」と彼に対して主張する。同情した彼がグループのリーダーに話しているスキに、走って逃げた。

どんなに慎重に行動していても、危険な目に遭うことはあります。最後は直感を信じて、できることは何でもやる。それが私の危機管理術です。