頭のいいワルとワルはいかに手の組むのか?

シナジー効果はもちろん、一般のビジネスでも十分に可能なものだ。

企業同士、あるいは社内の部署同士が手を結んで、互いの技術力を組み合わせながら新商品を開発したり、生産性を高めたり、マーケットをうまくシェアしながら売上げを倍増させるという効果を生みだせる。

ただし、烏合の衆が手を組んだからといって、必ずしも効果があるわけではない。

互いにとって一番のウィンウィンの関係になるためには、対極にいるような立場の者同士のスキルを組み合わせた時に、大きな結果が出てくる。たとえば、テレビドラマにもなった小説『下町ロケット』のような町工場の老練な技術と宇宙開発や海底探査機開発などの最先端科学との共同開発は、その好例といえるだろう。

そのために、まず自らの強みと弱みを知る必要がある。

よく用いられるのがSWOTによる分析の方法だ。SWOTは、

「Strengths」の強み(S)
「Weaknesses」の弱み(W)
「Opportunities」の機会(O)
「Threats」の脅威(T)

の頭文字をとった言葉で、上記4つの範疇を使ったマトリックスを使って分析する。

そして自らにある強みを知り、それを生かし、弱い部分を把握して、どう克服するか考える。さらに、外的な要素である機会を考えて、今後、訪れるであろう脅威をどう排除していくべきなのかを考えることで、新たな戦略を立てられる。

今回の18億のATM詐欺事件をSWOT分析にかけると、その巧さがみてとれる。

日本の犯罪集団の「強み」は、なんといっても振り込め詐欺に見られるような現金引き出しのノウハウだ。そして一気に金を引き出せるだけでなく、人集めのノウハウも持っている。しかし、クレジットカードの偽造知識は乏しい。こうしたカード犯罪を行うのは、もっぱら海外犯罪組織である。そうした弱みを克服するために、日本の犯罪組織は、海外組織と手を組んだ。

さらに報道によると、カード犯罪に長けた者たちは、出し子らがお金を引き出す間、南アフリカ銀行のシステムにハッキングして、システムの誤作動を引き起こさせ、しかも引き出す際の暗証番号も同じものになっていたという。このような行動は日本の振り込め詐欺の出し子にはできないテクニックだ。

機会という点をみれば、日本はセキュリティの強いICカードではなく、脆弱性のある磁気カードの使用が一般的である。IC化されていない、今の日本では犯行をしやすい。しかも、東京オリンピックを迎えて、海外カードを使うためのインフラも整備されてきており、タイミングがベストだと判断したのだろう。

ワルたちにとっての脅威は、多額の現金を引き出すと犯行がばれて逮捕されてしまうところだ。そこで、日曜日の朝という人の少ない時間帯を狙い、短時間で犯行を行う計画を立てた。