最後に井上氏は「ダイバーシティなんて言葉自体がなくなることが理想なのですけどね」と語った。

それは前半(http://president.jp/articles/-/20499)でも説明した“多様な人材が多様な価値観を持ち寄って、新たな価値を生み出す”というオリックスグループの理念ともつながる。異なる国籍、年齢、性別、職歴の社員が集まるのが当たり前の状態になれば、もちろん「ダイバーシティ」という言葉自体が不要になる。

「性差は個性にすぎない」「女性の男性化はダイバーシティではない」「女性自身が差別をつくる」――。今回の取材を通じて、オリックスグループの複数の人物が、同じような趣旨の発言をするのを何度も耳にした。井上氏は「マインドが追いついていない」と危機感を表していたが、実はグループ内での意識の浸透はかなり深まっているのではないだろうか。

事業領域が広がる中、多様な人材が、多様な価値観を持ち寄り、しなやかに対応していくことが、企業価値の向上につながっている。女性を活用するための施策の開始がそうであったように、オリックスグループが目指しているのは、他の企業のさらに一歩先なのかもしれない。

冨田寿一郎=撮影