そんな丸川氏は早々に地雷を踏んだ。都政改革本部が会場変更を提案してまもなく、丸川氏は「会場の変更にはIOC(国際オリンピック委員会)との調整が必要になる。東京都が組織委と調整しながらどういうプロセスを踏んでいくのか、よく見守りたい」と発言。そのうえで「都知事が都民の税金を預かっているのと同じように、競技場がない地域の皆様からの税金を私どもも預かっている。国民の皆様にちゃんと説明がつく形で考えていかないといけない」と慎重姿勢を見せたのだ。長く派閥の長を務めてきた森会長の「門下生」としては合格点が与えられる優等生ぶりを発揮した形だ。

都政改革本部の調査チームは五輪開催費用が3兆円を超す可能性を指摘している。これについても、丸川氏は「東京都から直接聴取するように事務方にお願いをした」「必要があれば都知事にお伺いすることもある」と上から目線で語り、自らが主導権を握る作戦に乗り出した。だが、都政改革本部の中核となっている上山信一特別顧問は「東京五輪の主催、すなわちリーダーは東京都。国は協賛、サポーターにすぎない」「五輪担当大臣は何をすべき役職なのか、まず自分の責任範囲を説明しないとダメでしょう。仕事もしない、責任も負わない人間が上から目線で聴取なんてダメでしょう」と猛烈に批判した。橋下徹前大阪市長もツイッターで「誰が権限者・責任者なのかと言えば、そりゃ小池さんでしょ。選挙で選ばれているんだから」とつづり、丸川氏への批判は渦巻いている。さらに追い打ちをかけたのは麻生太郎財務相だ。麻生氏は10月11日の記者会見で、「東京都とIOCで協議してもらうのが一義的なことだ。東京五輪は『日本五輪』ではない」と語った。開催契約が東京都とIOCで締結された経緯を知る重鎮の発言で、丸川氏の形勢は不利といえる。

頼みの綱である森氏率いる組織委は10月14日、小池氏を批判する異例の文書を発表し、「他県知事と都政改革本部の報告書が出る前に競技会場について協議をしていたとされる」として「水面下で他県知事とだけ話し合うのは、極めて不透明なやり方ではないか」と反発した。だが、選択肢を絞り込む前に自治体の長に確認するのは当然で「そもそも都の下部組織の組織委がそんなコメントを出すこと自体がおかしい」との批判が出ている。小池氏と森氏のバトルの間でカメレオンぶりを発揮する丸川氏の今後はいかに。

(時事通信フォト=写真)
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