2016年10月28日(金)

ワイングラスを回すことに意味はある?

dancyu 2014年12月号

文・西澤千央

グラスを回すのはちょっと照れくさい……

くるくる回して香りを嗅いでるワイン好きの人いますよね。あれ、どうも恥ずかしい気がして……。高級ワインならともかく、普段飲みワインで回すのはおかしいですよね?(42歳女性・教師)

クルクル回しては香りを嗅ぎ、粘性をチェックして小粋なひと言。そんな“いかにもワイン通”のイメージのせいか、グラスを回せば「あの人、調子に乗ってる!」という嘲笑がどこからともなく聞こえてくるような気がしてしまう、あぁワインこじらせ……。

しかし本来グラスを回すことにはちゃんと意味があるのです。「下に沈んでいる香りを浮き上がらせるためです。高めのワインが注がれる大きなグラスのほうが回しやすいけれど、安いワインでも味は変わりますよ」とは「コンラッド東京」ヘッドソムリエの森覚さんの弁。これ、言うなれば「味噌汁」理論。味噌汁は放っておけば味噌が沈み、上澄みはだしばかりになります。ワインも同様で、放っておけば沈んでしまう香りをグラスを回すことで上へ押し上げるワケ。

しかし渋谷のワインバー「アヒルストア」主人の齊藤輝彦さんは「グラスをじっと見つめながら回すのはワインの話しかしない人みたいでアレですね」、ワインショップ「カーヴドリラックス」代表の内藤邦夫さんに至っては「グラスを回すのは業界人かワインスノッブ(笑)。職業柄クセになってるんですが、レストランのホストテイスティングでは、そう思われたくないので必死にこらえています」とまで言い切ります。われわれの「グラス回しは恥ずかしい」の根底には「なんちゃってワイン業界人気取り」があるようです。

賛否両論あるものの、結局こういうことでしょう。回したければ回す。よっぽど古いワインでもない限り、確実に味や香りは開く。もちろん回さなくてもOK。

なお、味がわからないからとテイスティングを断る人がいるそうですが森さんはこう言います。「ぜひしてください。品質確認の意味もありますが、シャンパンや白ワインの場合は特に、提供温度をチェックしていただきたいんです。別に『いちごの香りがしますね』などと感想を言う必要はありませんよ」。

ホッと胸をなでおろした次第です。

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西澤 千央