そんな中、高橋さんが海洋土木の現場を現場代理として初めて担当したのは、東京統括事務所へ異動した2015年のことだ。同社は他のゼネコンと異なり、軟弱な地盤を改良する深層混合処理船「黄鶴(こうかく)」や浚渫船などの巨大な作業船を持つ。初めてそれらを見たときは、あまりの大きさとダイナミックさに圧倒された。そうした巨大な作業船を用いて、自然を相手に工事をすることに、いまでは醍醐味を感じている。

【上】休みの日は夫とドライブに出かける。動物が大好きな夫と共に牧場や動物園にもしばしば足を運ぶ。【下】旅行でリフレッシュするときは、大自然の中へ。黒部・立山に旅行に行ったときには、ダムにも足を運んだ。ダムなど大きな建造物は、やはりとても惹かれるという。

そして、海洋土木の面白さをそう語る彼女の将来の目標は、同社における女性初の事業所長になることだ。

「全国に大小様々な現場事務所がありますが、その一つひとつは一個の会社みたいなもの。管轄の工事のすべてに所長が責任を負っています。そうした環境で自分がどんなふうに力を発揮できるのか、いつか試してみたいです」

入社から5年が過ぎ、当初は自分一人だった女性の現場監督も、少しずつ人数が増えてきている。東京統括事務所では彼女を含めて2人。後輩たちともときどき女子会を開き、盛り上がる。

「どの現場に行っても『この前も現場に女の子がいたな』と言われるくらい、女性がいる風景が普通になっていくといいですね。ただ、いまの私は後輩の手助けをできるほどの自信や余裕を持ちたくても、自分の仕事だけでまだまだ精いっぱい。少なくとも彼女たちの足かせにはならないよう、日々努力を重ねていきたいと思っています」

 

▼高橋さんの24時間に密着!

6:00~6:30 起床
6:30~7:00 自宅出発
7:00~7:30 事務所で一日の準備
7:30~8:00 現場へ移動
8:00~8:30 朝礼・体操
8:30~12:00 現場巡視・品質確認/資機材発注・調整
12:00~13:00 昼食
13:00~13:30 工事打ち合わせ
13:30~16:30 現場巡視・品質確認/資機材発注・調整
16:30~17:00 現場から事務所に移動
17:00~17:30 事務所にて打ち合わせ
17:30~20:00 書類作成など/事務作業
20:00~21:00 帰宅
21:00~22:00 夕食
22:00~23:00 入浴・読書/その他家事
23:00~24:00 TV・夫と団らん
24:00~6:00 就寝

【左上から時計回りに】現場に着いたら打ち合わせ後は、しっかり体操。/船で現場に。備品などを運ぶこともしばしば。/現場でタブレット端末を使って進捗確認。/事務所に戻った後は、申請書類や発注書を作成。
 
高橋ひろ子
東亜建設工業 東京統括事務所 現場監督。1984年生まれ。2010年、東亜建設工業入社。技術研究開発センターに研究員として配属。12年、千葉支店への異動を機に初めて現場の担当技術者となり、地盤改良工事に携わる。その後、桟橋補強工事や国道の地下立体化工事などにあたり、15年4月より新海面処分場事業を担当。

村山嘉昭=撮影 Hair&Make-up=YOSHIE