「マイラー」と揶揄される副部長

あるメーカーの副部長は、部下が地方への出張の案件を相談すると、いつも「僕も一緒に行くよ」というのが口癖である。自分のマイルを増やすためだと思われている。部下からすれば、上司に同行すると言われると断りづらい。昨年彼が転任してきてから旅費交通費の予算の遂行状況がかなり上がったという。

彼は航空機会社のカードだけでなく、コンビニや家電量販店などのポイントカードも持っている。家電量販店では、文具やオフィス用品は何でも揃っているので隙あらば使おうとする。また貯まったポイントをどのように他のポイントに振り替えると有利になるかといった知識や知恵も豊富だ。

若手社員からは、高い給料をもらっているのに、なぜあそこまでこだわるのか理解できないと噂されている。部内では「マイラー」と呼ばれているそうだ。また経理部も今年度の旅費交通費がかさんでいることは把握しているという。

もし彼が、「出張では長時間の移動で身体の負担も大きいのだからマイルをもらってもいいじゃないか」「文具やコピー用紙を買っても、ガソリンを入れても、わずかのポイントしかつかない。これはお駄賃だ」と言い訳をするとしたら大間違いだ。

出張であれば日当がついてそれに伴う経費の対応もしている。また物品の購入については就業時間内であれば、それは業務だし、時間外であれば残業代の適用の有無が問題になるに過ぎない。

会社の経費は、あくまでも他人のお金であって、そこから生まれたマイルやポイントは、基本は会社のものである。ただ煩雑さの関係や、効率的に仕事を進める観点から、あえて会社はうるさく言わないだけだ。

それでもこの副部長は、会社も自分もなんら損をしていないと言うかもしれない。しかし同僚の評判を落とし、部下の信頼を失うという意味では大きな損失を被っている。本人がそれに気づかないだけだ。