トヨタグループの総合商社、豊田通商は旧トーメンとの合併から丸10年になる今年5月、新グローバル・ビジョンと長期経営計画を策定した。前年度は豪州ガス事業の減損などで16年ぶりの赤字決算となったが、今期は純利益700億円を見込み、巻き返しを図る。さらに5年後の2020年度には純利益1200億円を目指すという。

2050年に25億人、成長市場アフリカに照準

──新グローバル・ビジョンではどんなことに挑戦していくのか。
豊田通商社長 加留部 淳氏

【加留部】当社の強みであるモビリティ(自動車関連)に加え、ライフ&コミュニティ(生活産業関連)、リソース&エンバイロメント(環境、資源・エネルギー関連)の3分野で事業の柱を確立していく。リソース&エンバイロメントでは、再生可能エネルギーなど、地球課題の解決に貢献する事業にも注力していく。

「他商社がやっているからウチもやる」ということはしない。我々の知見が活かせる事業領域や地域において「豊田通商らしさ」を発揮して、新たな価値の創出を目指す。豊田通商らしさとは、現場で知恵を出して汗をかきながら、当社ならではの付加価値を提供すること。具体的には、世界各国の自動車バリューチェーンの一層の強化や、資源開発でいえばアルゼンチンのリチウム、チリのヨードなどがある。

──アフリカ地域のナンバーワン商社といわれている。

【加留部】アフリカ大陸の人口は50年に25億人と倍増する。潜在マーケットが大きいことは間違いない。当社では「With Africa,For Africa(アフリカと一緒に、アフリカのために)」という理念を掲げ、現地に深く根づきながら様々な事業を川下に広げ、アフリカの地域や人々とともに成長していくという長期的視野でビジネスに取り組んでいる。

特に力を入れているのがケニアだ。12年にケニア国家ビジョンの実現に向け、ケニア政府と相互協力による包括的な覚書を締結した。従来のモビリティ分野にとどまらず、地熱発電所や肥料製造工場の建設など幅広い事業を推進している。ケニアは農業国だが、肥料はすべて輸入に頼っていたため、国内製造は長年の課題だった。一方で、人材育成センター「トヨタケニアアカデミー」を開設して、幅広い分野の技術習得やビジネスパーソン育成もサポートしている。