因果関係の認定は土壌汚染解決のカギ

<事例1>マンション開発用地として購入した土地で土壌汚染が見つかった事例

マンション開発用地として電鉄会社が購入した土地から鉛、ヒ素、六価クロム、トリクロロエチレン等による土壌汚染が発見された。

しかし、前土地所有者は学校法人であり、汚染を伴う事業活動を行ったことはない。電鉄会社が調査を進めていくと、同学校法人が運営する学校の敷地拡張のための造成工事の際に、学校が所在する市の一般廃棄物の焼却灰も使用することになっていたところ、同市の廃棄物処理・清掃担当部局が廃家電、六価クロムやトリクロロエチレンの一斗缶、クリーニング溶剤の一斗缶等の様々な廃棄物を搬入し、同学校法人に知らせることなく焼却灰と一緒に埋め立てていたことが明らかとなった。

このため、マンション計画は一旦白紙となった。

そこで、電鉄会社は同市に対して損害賠償を求める責任裁定(責任の範囲と賠償の額を決める)を公調委に申請。同市の責任を認定し、損害賠償の支払いを命じる裁定が出されている(その後紆余曲折を経て、土壌の入れ替え等の対策が施され、新たなマンション計画が実行されている)。

<事例2>相続税の物納として国庫に納められた土地を民間事業者に払い下げ後、その土地の開発中にシアンによる土壌汚染が発見された事例

かつてメッキ会社を営んでいた前土地所有者から相続税の物納として土地の納付を受けた国が、これを民間不動産事業者に売却、同事業者がマンション開発を始めたところ、地中からシアンによる土壌汚染が発見された。国は当該土地を買い戻すとともに、土壌の入れ替え等の対策を講じることを余儀なくされた。

土壌汚染対策費用について、汚染を伴う事業活動を行っていたメッキ会社に負担を求めることを考えるも、同会社はすでに解散会社であり、資力がなく、かつ存命の経営者一族は高齢であったため、損害賠償を求めることは困難であった。そこで、国が前土地所有者を相手取り、因果関係を明らかにする原因裁定を公調委に申請。事業活動と汚染の因果関係を明確にするとともに、解決金を同会社が国に支払うことを約束する調停案を双方が受諾する形で終結した。

なお、ここで因果関係を明らかにするということについて、当たり前のように聞こえるかもしれないが、過去に行われた事業活動によって生じた土壌汚染は何が汚染源なのかを特定することは難しく、その点で揉めることも多い。また、造成工事等のために搬入された土に汚染物質が含まれていて、土壌汚染が事業活動と関係がないといった場合もある。したがって、この因果関係の認定は土壌汚染紛争解決のための一つのキモであるとも言える。