小学校の英語授業はクラスルーム・イングリッシュ

【三宅】他の教科も小学校で習って中学校へそのまま持ち上がるわけですから。イーオンに来る子どもたちを見ていますと、やはりもう高学年になると、英語を読みたいし、書きたいのです。単に英語を楽しむだけではなく、単語もしっかり覚えたいし、きちんとした英文も書きたいわけです。

ところで小学校の先生方ですが、英語活動の推進に当たっては、もちろん大変な苦労もあったかと思うのですが、教科となると、これまでと違い、それなりのスキルも求められませんか。英語の教員免許や本格的な授業経験がないということについては心配ありませんか。

【佐藤】最初はそう受け止められている方が多いと思いますね。ただ、「じゃ、先生、算数ってとてもお得意でした?」と。一緒ですよね。しかも、理科でも社会でも、みんな教えられているじゃないですか。問題ありません。

【三宅】なるほど。「数学、好きでした?」はいいですね。

『対談! 日本の英語教育が変わる日』三宅義和著 プレジデント社

【佐藤】あとは会話ですから、話す場面っていうのが大切なわけです。「子どもだったらどんな場面で話したいかな、使いたいかな」と考えるのが一番得意なのが、小学校の教員だと私は思っています。例えば「How many……?」っていう表現がありますよね。机の上に5本鉛筆が並んで、「How many pencils?」って、これつまらないです。それよりも「給食のゼリーの数」にしてみる。もし、休んだ子がいたら余った分は食べられます。みんな、真剣に数えますよね。

私が、研修でよくやるのは、ペットボトルのキャップの掴み取りです。自由に掴んでもらいHow many caps?」って。「Three」とか「Five」と答えが返ってきます。そこで「Three plus five is……?」と質問すると「Eight」。「ほら、それ算数でしょう。先生、いつも算数でやっていらっしゃいますね。算数の中でも英語をこんなふうにできますよ」と言うと、「何だ、この程度ならできる」と思われます。ぜんぜん難しい英語は使っていません(笑)。

小学校の英語授業イコール、クラスルーム・イングリッシュや先生方の英語力ではありません。だから、肩肘張って考えずに、自然体で「子どもたちがどんな場面で使いたいか、いっぱいその場面を考えてみてください。そしたら、子どもたちは、やってみたい、話してみたいって気になりますよ」って話させてもらいます。

【三宅】そういうお話を、全国の小学校の先生方に聞いていただきたいですね。

【佐藤】はい。だから、あっちこっちへ行きます。小学校から要請があれば、どこへでも飛んでいきますから。私は唯一自信があるのは、研修が終わった時に「私でもできると思った方?」って問いかけると、ほとんど全員が手を挙げてくれます。それが研修なんです。それだけでいいんです。そうしたら、あとは先生方はプロなんですから、自由に考えてくれるはずです。幸い、いろんな教材もあるし、CDもありますから、心配いらないんです。

【三宅】安心しました。それを理解できた先生と、そうでない方とは、ぜんぜん違うでしょうね。まだ「自分の英語力を高めないと……」と大きなプレッシャーに悩んで「何をやればいいかな、うちのクラスは大丈夫かな」と頭を抱えていてもしかたありませんよね。

【佐藤】そうなんですよ。これまでずっと小学生を立派に指導してきた自信を思い出してください。

【三宅】本日はありがとうございました。

(岡村繁雄=構成 澁谷高晴=撮影)
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