アクセントのある言葉のほうが覚えやすい

【三宅】それはとても面白いですね。

【佐藤】この調査からは、さまざまな発見がありました。例えば「なすび」という単語は赤ちゃんの獲得が早いんです。逆に「さくら」はダメ。なぜかっていうと、「なすび」は頭のアクセントが高いでしょう。「さくら」はフラット。そして、英語は「apple」「doctor」「orange」みたいに名詞の90%が強弱でできているんです。

たぶん、平板な言葉より、頭にアクセントのある言葉のほうが覚えやすいんですね。日本語とも、単語のアクセントのところからも共通しているということがよくわかりました。だから、絵本の読み聞かせが子どもたちの英語の獲得にいいというのも肯けます。お母さんたちがはっきり読むとアクセントもきちんとつきます。

『対談! 日本の英語教育が変わる日』三宅義和著 プレジデント社

【三宅】英語の絵本の読み聞かせが子どもにいいという理由は、そんなところにもありましたか。

【佐藤】研究から得た成果では、それがとても大きなものでした。絵本については、保育園と幼稚園に行って、200人を対象に個別調査をしたことがあります。その時に、まず20の英単語を反復してもらいます。「lunch」って言ったら「lunch」、「where」って言ったら「where」と真似てもらいます。

それから3週間、50人ずつ4つのグループに分けて研究をしました。4つというのは、歌詞はすべて同じですが、歌のCDをずっと聴いていくグループ。英語のリズムを体得するための「チャンツ」を聴くグループ。それからアクセントをしっかりつけ、気持ちを込めた朗読を聞くグループ。あとは何もしないグループです。

その結果、面白いことがわかりました。日本語の語彙力のあるお子さんは、5歳ぐらいですと何を聞いても3週間で発音が良くなります。しかし、日本語の語彙力の低いお子さんの場合、英語で伸びるのは朗読だけです。歌とかチャンツは聞き取りにくい。ただ、語彙力のあるお子さんでも4歳以下だと歌はダメ。歌はたぶんメロディも覚えなくてはいけないので、記憶の負荷がかかるんだと思います。小さくてもうまくいくのは、意外とチャンツ、そして朗読。そういうことから、どんな子の条件でも、幼くて発音の獲得に効果があるのは、絵本の読み聞かせだということがわかりました。

さらに、絵本というのは日本語で本を読むのとまったく同じことで、想像力を養うこともできるし、表現力も豊かになるし、親子での会話にもつながりますよね。だから、教室に当てはめれば先生と生徒と同じです。このやり取りはとっても大切で、コミュニケーションの基本を学ぶことにもなります。ですから、私どもではもう10数年前から英語教育には絵本を取り入れています。

【三宅】その際、子どもたちの言語習得の差はあると思いますが、それも訓練できるのでしょうか。

【佐藤】結局、反復する力がまず大切です。知らない単語を聞いて反復する力。ワーキングメモリーという短期記憶がかかわり、2歳ぐらいから発達していくんですよ。ですから、親子でやり取りをしているお子さんは、その短期記憶も鍛えている。だからこそ、言葉を繰り返すことを大切にしています。

【三宅】それは英語であろうと日本語であろう一緒ですからね。

【佐藤】そうですね、習い事をしていても、リピートはすべてに通じます。特に、ワーキングメモリーは大学生、20代前半がピークです。あとは下る一方。けれども、学習した音の配列などは、私たちの長期記憶の中にたくさん蓄えられていますので、両方をミックスしていけば言語獲得に役立ちます。

(岡村繁雄=構成 澁谷高晴=撮影)
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