イ・ボミは2015年、2位のテレサ・ルーに8000万円もの差をつけ、圧倒的強さで賞金女王の座に輝いた。体格は決して大きくないが、平均ストローク1位、パーオン率1位と抜群の安定感を誇る。そんな彼女の高度な技術を支える心の内に迫る。

2015年のプロゴルフ界は韓国の女子プロ、イ・ボミ選手に始まり、イ・ボミ選手で終わった年となった。

獲得賞金約2億3050万円は男女を通じて歴代最高額の新記録。賞金女王や平均ストロークなどプロゴルファーの実力を示すデータでは主要8部門中6部門で1位。おまけにあの美貌とチャーミングな笑顔で日本中のゴルフファンを虜にした。そのイ・ボミ選手の強さと魅力に迫ってみた。

▼イ・ボミの軌跡

1988年:8月21日、韓国水原市生まれ。12歳でゴルフを始める。
2007年:20歳でプロ転向。テコンドーで鍛えた強靭な足腰を武器とする。
2010年:韓国ツアーで年間3勝を挙げ賞金女王に。
2011年:日本ツアーに本格参戦し、同年3月にヨコハマタイヤPRGRレディスで初優勝。さらに最終戦の11月のLPGAツアーチャンピオンシップ・リコーカップで国内メジャー初優勝。
2013年:日本女子プロ選手権で国内メジャー2勝目を挙げる。
2015年:年間7勝を挙げ、男子の伊沢利光プロが獲得した約2億1793万円を約1300万円上回る約2億3050万円の歴代最高記録で賞金女王に輝く。通算15勝。158cm、56kg。血液型A。

【2015年の部門別成績】
賞金ランキング1位●2億3049万7057円 メルセデスランキング1位●769.5ポイント 平均ストローク1位●70.1914/平均パット1位●1.7589 パーオン率1位●74.5880/パーセーブ率1位●89.0269

やっと果たせたお父さんとの約束

――15年を振り返ると、どんな年でしたか。

【ボミ】14年はお父さん(ソクジュさん=14年9月に56歳で死去)と約束した日本の賞金女王を取れなかったので、次は絶対に取ると心に誓いました。難しいとは思いましたが、それが達成できて人生最高の年となりました。韓国に帰ってお父さんの墓前に報告できることが本当に嬉しいです。

*父親のソクジュさんは彼女にゴルフを教えた最初の人。娘が中学、高校時代に仕事の合間をぬって片道1時間半もかかる練習場に送り迎えをした。

――お父さんにはどんな報告を?

【ボミ】亡くなる前に、「賞金女王はプロにとってナンバーワンの証し。特にレベルの高い日本で達成してこそ、その価値がある。必ず夢を叶えてくれ」と強く言われました。そのお父さんとの約束を実現するためにメジャー競技にも行かず、日本の試合に専念しました。掛け持ちで夢を叶えられるほどゴルフは甘くありません。

実は賞金女王が決定した伊藤園レディースに優勝する前の夜にお父さんが夢に出てきたんです。きっと後押しをしてくれたんですね。だから墓前では「お父さんありがとう。約束を果たせたよ」と報告します。

*実は父親のことをもっと細かく聞くつもりだったのだが、それをやると泣いて話ができなくなるからとマネジャーから事前に止められた。