なぜ、自宅での看取りが難しくなったのか?

「看取り難民(死に場所)」の問題が話題に上ることが多くなってきました。

現在も自宅での看取りは難しく、病院で最期を迎える人は8割を超えています。2025年には団塊世代のすべてが75歳以上になり、後期高齢者は日本の人口のほぼ6分の1、2000万人に達するそうです。当然、要介護老人は激増し、多死時代がやってくる。

そんな来るべき将来に、在宅で介護を受けていた人の容態が急変したらどうなるか?

救急車で搬送されても病院はどこも満杯で、入院を断られてしまう。結局、ベッドの上で死ぬことさえかなわない「看取り難民」が発生するというわけです。

これは現在の医療・介護体制と人口分布から見た予想であり、未来の不安をことさらに述べても仕方がありませんが、なぜ自宅での看取りは難しくなっているのでしょうか。昔はごく当たり前のことだったのに、どうして実現できなくなったのでしょうか。

高齢になると誰もが、死がそう遠くないことを悟ります。

その高齢者の6割が「自宅で死にたい」と考えているそうです。頑張って働いて手に入れた家。思い出が詰まっている住み慣れた空間で最期を迎えたいというのは当然でしょう。「終の棲家」という言葉にも、そうしたニュアンスが感じられます。

しかし、先に記したように現在は8割以上が病院で亡くなります。望み通り自宅で死ねる方は1割程度です。

自宅での看取りが難しくなった最大の理由は、自宅まで来て医療行為をしてくれる在宅医が少ないことでしょう。昔は白衣を着て、大きなバッグを持って往診に向かうお医者さんを見かけたものですが、今はそうした姿を見ることはほとんどありません(なお、在宅医療は「訪問診療」と「往診」のふたつに分類されています。訪問診療は計画的に組まれた医療で、月に1~2回といった割合で定期的に医師が訪問するものの、往診は急に体の具合が悪くなった時、電話でそれを伝え、来てもらうことを指すそうです)。