無制限に働かせることができるザル法

それが特別延長時間に関する「特別条項付36協定」と呼ばれるものだ。

「臨時的に限度時間を超えて時間外労働をすることが必要とされる場合」「特別な事情が予想される場合」という条件付きであるが、要するに労使がともに、

「臨時的状態」
「特別な事情がある」

と認めれば、限度時間を無制限に働かせることができる。

しかも、36協定の基準はあくまで行政指導の基準だ。法的な強制力はなく使用者に対する“お願い”にすぎない。

つまり、実態はザル法になっているのだ。

また、実際に労使協定で締結されている特別延長時間を見るととても信じられないものになっている。

厚生労働省の調査では1カ月の特別延長時間の内訳で最も多い時間帯は月間「70時間超80時間以下」でその比率は36.2%。

ところが、過労死基準といわれる「80時間超100時間以下」が16.0%、さらに「100時間超」の会社が5.5%も存在する。

しかも、その割合は大企業ほど高い。

実際の残業時間を示すものではなく、企業としては当局の指導を受けないために”保障”にしているわけだが、それにしてもコンプライアンス上も問題ありの時間だ。