離職者はゼロに

――人材の確保には、どう取り組んでおられますか。どこも悩んでいますが……。
本社事務所兼直売所前にて

【鈴木】まず、労働時間ですね。以前は農閑期、農繁期でめちゃめちゃでした。暇なら休むスタイル。現在は週1回必ず休んでプラス1日の休日。隔週で土日休のような形。休日が平日になることもありますが、シフト制を採用しました。社内レクリエーションも増やしました。社員旅行に月1回の食事会、バーベキュー大会、野球チームにゴルフ部と。

――そういう工夫して、離職者が減ったのですね。

【鈴木】いまは離職者ゼロです。先日も新人が、こんなに丁寧に優しく教えてくれる会社は初めて、ここなら成長できる、頑張りたいと皆の前で言ってくれました。すごくありがたい。食事会やバーベキューを頻繁にしているのは、下からの声が聴けるから。皆言いたいことを僕に言います(笑)。

――では、ITの活用についてお尋ねします。鈴生は電機メーカーとも組んでいろいろ試しておられるそうですが、どんな見通しをおもちでしょうか。

【鈴木】今はデータだけ蓄積している段階です。それを活用するのが本当のICT。まだデータが少ない。いろんなネットワークを使って集められれば、いずれ宝になります。

――生産者側の状況データと外食や小売のキャンペーンの連動がうまくいかなくて、作物のない時期にキャンペーンを張るミスマッチも起きていますね。

【鈴木】僕らは、たとえばレタスの収穫時期に焦点を当てたデータ化を考えています。品種、栽培時期にもよりますが、レタスの収穫時期は、生育期間の平均気温の累計が1400度に達した頃と言われています。気象データをもとに1400度から気温を前倒しに引いていけば、あと何日後で収穫できると分かるはず。そのデータをお客様が見て、先々のメドが立つ。しかし実際は1350度で獲れるときもあれば、1450度のときもある。なぜ、そうなったのか。日射量か、地温か、気圧か、と追っていくには僕らだけでは限界があります。

――サンプル数を増やさないといけないのですね。

【鈴木】はい。そうです。そこができれば収穫適期が読み取れるでしょう。ぜひ、それをやりたいんですけど、現段階では無理ですね。

――実際の相場の変動にはどう対応しておられますか。

【鈴木】契約栽培なので、一定の金額でどんな災害時も出荷し続けていますが、お客様には月報と2週間先の収穫情報を出しています。生育場所の写真付きで状況を説明して、この時期にはこうなります、と。生の情報を渡して、契約を守れない可能性があるとしたら、前もってお知らせします。

――鈴生はJGAP(日本版GAP(農業生産工程管理))を取得されていますが、レギュレーションへの対応はいかがですか。

【鈴木】さまざまな基準を統一してくれたら楽ですけどね。それが世界基準なのか日本だけなのか非常に見分けが難しい。僕はオリンピックに作物を出したいのでJGAPでは出せないとなれば、GGAP(グローバルG.A.P、ドイツの非営利機関による農産物安全認証)を取りに行きます。Gを取る準備はできています。ただ、何のためのG取得かというと、2020年の東京五輪に作物を出したい。その程度のレベルなんです。一つメリットをあげると、グループ内で鈴生のマニュアルはJGAPだと伝えれば、作り方が共通化できます。独立して畑を持っても鈴生に納めたければタバコを吸いながら収穫できないし、トイレの後は手を洗うとか、当たり前のルールが浸透します。理念を伝える社内、グループ内のルールになっていきます。

(鈴生完)

(大和田悠一(有限責任監査法人トーマツ)=聞き手 山岡淳一郎=文・構成 尾崎三朗=撮影)
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