3Mとトヨタの姿勢に学ぶべきこと
本書は、理研やマクドナルド、東洋ゴム、三井不動産など、代表事例として8社について詳細に病状を分析する。
たとえ社内人事で経営トップが交代しても、企業が生まれ変わることは簡単ではない。これは、京セラ名誉会長の稲盛和夫氏が陣頭指揮をとるまで変われなかった日本航空が証明しているといえるだろう。
肥大化・硬直化してしまった組織の社員は、疑問を抱えながらもあきらめてしまうのが世の常なのかもしれない。そして、組織の論理と折り合いを付けられなければスピンアウトすることになる。惰性で組織が保たれているうちは、自己変革するだけのエネルギーは出てこないためだ。
逆に成功事例として紹介している3Mのケースでは、社員が必然的にイノベーションを起こし続ける仕組みが社内にビルトインされている。経営トップが大企業病の怖さを見越していた故のことだろう。同社のトップは「会社や上司の言いなりになるな」と社員に伝え続けてきたという。
同社では、社内のノウハウや技術が有機的に結びつくことで、数多くのヒット商品を生みだしてきた。それは組織内を常に活性化し続けてきた取り組みの成果に他ならない。大企業のトップや管理職たちに、3Mのトップが社員に向けた言葉の意味を噛みしめてほしいものである。
そして本書では、トヨタ自動車がハイブリッド車の開発を決めた時の腹のくくり方を紹介している。経営幹部から著者が聞いた「社会にとっていいことだから、それで倒れたら仕方がないじゃないか」という言葉は、大企業、メーカーに限らず、すべての企業が判断基準とすべき考え方だといえるのではないか。