「映画の中の小夜子は可愛げがある」

それにしても、小夜子になりきったかのような大竹の熱演はすごい。おのれの欲望をむき出しにして、周囲を威圧する言動は小憎らしいばかりだ。なかでも、被害者・津川雅彦が扮する元女子短大教授の娘役である尾野真千子との焼肉屋での罵り合い、掴み合いの場面は鬼気迫るものがある。一方で、ふとしたきっかけで見せる初老の女の孤独と不安の表情もさすがといっていい。

同じパンフレットで黒川氏も、完成した映画における大竹の印象を問われて「映画の中の小夜子は、男を騙して、愛情を偽って金をせしめる女ですが、魅力的な一面もあるんです。可愛げがあるというかね。表現力の豊かな大竹さんに演じてもらって、小夜子のイメージが、より鮮明になったような気がしています」と答えている。

その黒川氏に後妻業について話を聞いたとき「似たような事件はたくさんあるでしょう。千佐子にしてもそうだが、70、80を過ぎた爺さんに50代、60代の女が積極的に近づいて来たら、それはもう金目当てしかない。たとえ、それに気づいても『はい、はい』と何でも聞いてしまう緩さが男には体質としてあります」と指摘していた。

ところが映画のラスト、小夜子に操られっぱなしだったような津川が、公正証書遺言より後の日付で、娘たちに土地と家を遺そうとしていた。それはどこかで、自分の最晩年に彩りを与えてくれた小夜子の底知れない怖さを感じ取っていたからに違いない。やるせないなかにも、どこか救いのある終わり方になっている。

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