「製品(商品)の進化」経営を推進する4つのポイント

時代を超えて求められる企業になるには、
(1)市場
(2)顧客
(3)意味(用途・役割)
(4)製品(商品)
(5)価格
(6)ブランド
(7)サービス
(8)課金方法
(9)販路
(10)販売方法
(11)コミュニケーション
という11の領域で経営を進化させ、経営全体を最適化することが必要だ。

詳しい進化経営のプロセスは、既に上梓した『価値づくり進化経営』(日本経営合理化協会刊)に譲るが、今回は(4)製品(商品)の進化に取り組んだ丸京製菓から、自社商品を高度化させ、全体最適を図りながら進化していくポイントを4つ抽出する。

(1)自社の弱点を「商品の賞味期限が短い」ことだと特定した

食品や菓子のメーカーは新商品開発や味の改良改善には熱心に取り組むが、自社製品の前提条件になっている「賞味期限」に手をつけることは少ない。その一方、丸京製菓は自社の売上高が増えない原因は商品の賞味期限が短いことにあると判断し、賞味期限を延ばす方法を考えた。

(2)食品添加物を入れず、氷温技術で賞味期限60日を実現

保存料など添加物を加えて賞味期限を延ばす企業は多いが、安全安心志向が強まる中で、こうした施策はデメリットになる場合がある。丸京製菓は地元の研究機関が持つ氷温技術に着目し、添加物を加えずに自社製品の賞味期限を伸ばすことに成功した。

(3)賞味期限が長くなったことを生かして販路を全国に広げ、海外にも進出した

賞味期限が長くなったことで、小売業からも生活者からも支持され、物流上不利な鳥取という地にありながら販路を全国に拡大できた。さらに賞味期限を長くできたことで輸出が可能になり、海外展開にも弾みをつけた。

(4)廃棄ロスをなくした

単価が安い商品を製造するメーカーは、顧客単価を上げるために商品数を増やしたパック詰め製品をつくり、スーパーや量販店で販売することが多い。しかし世帯人数が少ない核家族化が進む中で、賞味期限が短く、食べ切れない量がある食品やお菓子は敬遠される。だが日持ちする製品なら、この懸念は払拭される。

飛躍する企業は、「製品(商品)を進化」させる際にも、他社とは目のつけどころが違うことを教えてくれる。

酒井光雄(さかい・みつお)
1953年生まれ。学習院大学法学部卒業。日本経済新聞社が実施した「経営コンサルタント調査」で、「企業に最も評価されるコンサルタント会社ベスト20」に選ばれたマーケティングのコンサルタント会社、ブレインゲイト代表取締役。著書に『価値づくり進化経営』(日本経営合理化協会)、『全史×成功事例で読む「マーケティング」大全』『成功事例に学ぶ マーケティング戦略の教科書』(共にかんき出版)、『コトラーを読む』『商品よりもニュースを売れ! 情報連鎖を生み出すマーケティング』(共に日本経済新聞出版社)、『中小企業が強いブランド力を持つ経営』『価格の決定権を持つ経営』(共に日本経営合理化協会)、『図解&事例で学ぶマーケティングの教科書(マイナビ 監修)』など多数ある。日経BP社日経BP Marketing Awards(旧名称 日経BP広告賞)の審査委員を務める。
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