「すべての人に役割がある社会」を創りたい

柏村さんが、人それぞれの価値観、多様性を重視する原点。それは、自身がテーマとしている「すべての人に役割がある社会」を志すきっかけは学生時代にある。高校生の時に、スペシャルオリンピックスという、パラリンピックの子ども版のようなイベントにボランティアとして参加したことがきっかけで障がい者支援について興味を持った。大学では社会福祉学科に進み、障がい者の方々へのボランティア活動に打ち込んでいた柏村さんは、そのまま社会福祉の道に進むことを考えていたという。しかし、さまざまな活動に参加する中で、支援団体ができる活動の限界も感じ、就職活動の際、悩んだ末にリクルートに入社した。「結局、経済合理性を追求しながらその価値を高めていくことをやらないと、福祉は良くならないのではないか、と考えたのです」

柏村さんは、マイノリティであればあるほど支援が得られにくいという現実があるのではないか、と話す。「『ワーキングマザーのために短時間勤務制度を』といったやり方をすると、一部のマイノリティの人のためのように見え、ワーキングマザーとそうでない人の間に無用なコンフリクトが生まれてしまったりします。そもそも多様な人が多様な働き方を選択できる世の中が実現すれば、ワーキングマザーも介護中の人も自分に合った働き方を選びやすくなります。たとえば、在宅勤務が一般的になれば、通勤困難を抱える障がい者の方も働けるようになります。『らしさ』の数だけ、働き方がある社会、をミッションとして掲げるリクルートスタッフィングが、そうした社会の実現を推進する役割を果たせたらと考えています」

「私も若い頃は、ものすごく働いていたんですよ」と語る、柏村社長。中国赴任時のあまりの慌ただしさから働き方を変え、仕事のやり方を全て見直し、効率化に努めたという。

「らしさ」の数だけ、働き方がある

「『らしさ』の数だけ、働き方がある社会」の実現を目指すリクルートスタッフィング。社長である柏村さん自身は、柏村さん「らしい」働き方はどのようなものなのか。その答えは、「朝型です」とのこと。「朝は5時に起きて、1時間ほどお風呂に入って読書。ビジネス書から小説まで、好きな本を読むこの時間が至福の時です。その後、夫と朝食を済ませて夫婦で通勤。始業の9時までは自分の考えを整理する時間です。朝は一番仕事がはかどります。始業という締め切りがあるので、そこまでに終わらせなくては、と集中して仕事ができるんです。夜遅くまで残業をすることはありません。夜は打ち合わせなどは入れず、会食などで人と会い、情報交換するなどインプットの時間としています。」朝の時間を有効に使うことが、効率的に仕事をする鍵となっているようだ。

では、キャリアの早い段階から管理職として抜擢され、現在は2000人以上の社員を抱える企業のトップとして活躍している柏村さん「らしい」マネジメントとはどのようなものだろうか。柏村さんが大事にしているのは、「『任せる』のではなく『頼る』こと」。そして、「特に女性はもっと頼っていい」と話す。「全ての女性がそうだというわけではありませんが、自分ができないことに目を向けている女性が多いように感じます。男性でも女性でも、完璧になんでもできる人はいません。自分のできること、できないことを自覚して、できないことは人に頼ったらいいと思うのです。最終的にはチームとして最高の成果を出せればいいのですから、メンバーに助けてもらえばいいし、自分の得意なことで精一杯サポートしたらいいと。」

柏村さんは、特に若い女性たちの中に「見えない不安に悩んでいる人が多い」ことが気にかかっているという。「『子どもが生まれたらこの仕事を続けられるか不安』、『管理職は務まらないかもしれないから不安』など……。気持ちはわからないでもないですが、むしろ目の前の仕事を一生懸命やってスキルをつけて、選べる自分を作っておくことの方が大事だと思います。私は、女性という生き物は最後の最後には本当に大事なものを選びとれると思っています。だから、見えない不安からいろいろとあきらめてしまわずに、とことん欲張っていただきたい。そして、欲張るみなさんが、自分『らしい』働き方を生み出せるよう、我々も全力でお手伝いさせていただきたいと考えています」