立て板に水のトークは、ビジネスに必要ない。とはいえ、マジメに拝聴するだけでは先に進まない。相手がこちらに(意識的・無意識的に)求めていることを的確に察知し、シンプルに返答すること。相手の立場に立てば、心を溶かすことができる!

第一印象がいい。これは顧客や取引先とうまくやる人の共通点のひとつだ。親密になるための最大の関門が、いわば「出会い」の時期。そのときのやりとりが、あとあとの結果を左右する。

では、相手が信頼し、心を許す存在となるには、どんな第一印象を残せばいいのか。『99%の人がしていないたった1%の仕事のコツ』を著したデロイト トーマツ コンサルティングのシニアマネジャーの河野英太郎氏は、売り込みに行くにせよ、売り込みを受けるにせよ、トーク術の前にやはり「聞く力」が重要な鍵になると話す。

「返事と相槌は、大きく。これは昔も今も仕事の基本中の基本ですが、案外、きちんとできない人が多いと感じています。打てば響く。相手側の話へのリアクションがよいほど、相手は話しやすくなり、自然と打ち解けるのです」

つまり、「うん、うん」と首を縦に振るだけの相槌や、判で押したように同じ言葉を繰り返すだけでは、礼儀正しさをアピールできても、単にまじめなだけの人物というレッテルを貼られておしまい、という可能性もある。

よって大事なのは、相手の目を見ながらの「はい」「ええ」はもちろん、親しみをこめた笑顔で、「なるほど」「確かに」「おっしゃるとおりです」「そうですね」「まったく同感です」「ごもっともです」など、表情や態度といった身体表現も意識して言葉と同時に繰り出すこと。同意、共感、賞賛、承認を伝えることで、頷きや相槌の効果がより高まるというのだ。河野氏は語る。

「複数人同士で取引先と面会すると、最初は部長同士が話していても、ある部下が『へえぇ』『なるほど』と熱心に拝聴していると、取引先の部長はその部下の顔を見て話し始めるといったことはしばしば起こります。アイコンタクトをされるようになったら、自分の名前も覚えてもらいやすくなります」