フォーラムに先立ち、参加企業4社がサステナビリティへの挑戦について語る──

「Co-Creation」「Co-Growth」というコンセプトのもと、スポーツと文化を世界のさらなる成長につなげる──。今年10月19~22日、京都と東京の2都市で「スポーツ・文化・ワールド・フォーラム」が初開催される。そのなかで、ダボス会議を主催する世界経済フォーラムと日本政府が連携して実施する「官民ワークショップ」では、世界の課題の解決に向けて、参加団体がそれぞれ趣向を凝らした発表を行う予定だ。
人口問題や食料問題、先進国での高齢化などが深刻化していくなか、“健全で持続可能”な社会活動、企業活動をどのように維持し、また発展させていくのか──。同ワークショップに参加する企業のうち、味の素、伊藤園、みずほフィナンシャルグループ、マーシュ・アンド・マクレナン・カンパニーズの4社の担当者が一堂に会し、当日の注目ポイントなどと合わせて語り合った。

──まずは「スポーツ・文化・ワールド・フォーラム」に参加する経緯や目的について聞かせてください。

味の素(株)
グローバル・コミュニケーション部
三好寛行PR・CSRグループ長

【味の素】今回のフォーラムは、文部科学省が世界経済フォーラムと協力するということで、非常に発信力の高いイベントであることが魅力の一つです。2050年には世界の人口が90億人に膨らむとされるなか、当社はこのままでは立ち行かない食料問題の解決に向け、さまざまな取り組みを進めています。この機会に発信力のある舞台で未来の食をテーマに話し合い、世界に問題を提起したいと考えました。

代表的な“うま味” 物質であるグルタミン酸の発見から始まった当社の歴史も100年を超えました。現在も「Eat Well, Live Well.」というコーポレートメッセージを掲げ、食を通じた健康づくりを推進していますが、このフォーラムを我々自身の次の100年を考える契機にもしたいと思っています。

【伊藤園】当社も問題意識を持ったグローバルリーダーたちが集い、世界中から注目が集まるこの機会に、お茶の文化をあらためて世界に伝えていきたいとの思いから、フォーラムのパートナーとなることを決めました。

離農が進み、急須でお茶を飲む習慣も減少傾向にあるなど、この日本で約1200年の歴史を持つお茶の文化も、今後どのように継承していくかを考えなくてはなりません。海外では色や風味が異なる緑茶も出回るなか、このフォーラムで日本の緑茶を体感してもらい、その素晴らしさを再認識してほしいと思っています。

──両社とも世界に広く問題意識を発信したいとお考えなのですね。一方、みずほフィナンシャルグループでは、すでに動き出している取り組みを議題にするとか。

(株)みずほ銀行
産業調査部戦略プロジェクト室プロジェクト推進チーム
松尾紀史調査役

【みずほフィナンシャルグループ】官民ワークショップの目的の一つは、未来の課題解決に向けて世界のトップリーダーがグローバルアジェンダについて話し合うこと。実は当グループでは、当社執行役社長でグループCEOの佐藤康博が国の産業競争力会議の議員を務めていたこともあり、年々増大する医療費の適正化を実現するべく、健康寿命の延伸を目指した政策提言を行ってきました。その具体策の一つが「健康ポイント」。運動と健康を連携したこの取り組みは、ゆくゆくは経済発展や産業の発掘にまでつなげようとするもので、既に政府、関係省庁支援の下、健康サービス・システム提供等を行う民間企業、複数の参加自治体、筑波大学の産官学連携により大規模な実証実験を進めています。

今回のフォーラムのテーマであるスポーツや文化は、ビジネスとは別の括りで語られることが多いですが、金融機関である私たちとしては、それらを経済発展や産業創出と結びつけていきたい。今回のワークショップで、健康長寿社会とビジネスモデルとの関係性について議論を深めたいと考えています。

──リスクマネジメント関連のサービス等を提供しているマーシュ・アンド・マクレナン・カンパニーズとしては、どのような考えからフォーラムへの参加を決めたのでしょうか。

【マーシュ・アンド・マクレナン・カンパニーズ】当社は米国に本社を置く多国籍企業グループで、リスクマネジメント、人事コンサルティング、そして戦略コンサルティングによって、世界のあらゆるリスクに対処し、企業の健全経営をサポートしています。世界経済フォーラムのストラテジック・パートナーの一社でもあります。

このフォーラムが掲げる「人間力の向上」「世界の人々の交流促進」「新しい経済・文化の創発」という3つの柱は、リスクを乗り越える上で非常に重要なポイントだと感じました。世界で約140年という歴史を持つグローバルリスクのスペシャリストとして、フォーラムに集う各界のリーダーたちに持続可能な企業経営のヒントを提示したい──。参加を決めた背景には、そんな当社の強い思いがあります。