――ご自身は1970年代にもオイルショックを体験され、直後に大病を患うという経験をされています。そこで学んだ危機脱出法があれば聞かせてください。

30代の頃オイルショックが起こり、石油製品の供給手配に忙殺され過労がピークに達した結果、急性肝炎で絶対安静を余儀なくされました。自分にとって初めての大きな挫折で、いつ治るかもわからず、焦ったり落ち込んだりしたこともありました。しかし結局は、現実を認めてゼロからやっていくしかないんですね。達観してしまうと怖いものは何もなかった。それからは自分の意見を率直に言うようになりました。皆と違ってもそれが組織のためになると思えば言ってみる。

「嫌われるんじゃないか」などとは考えなくなりました。

――今後は海外ビジネスの比重が増しそうですが、その際は自社の主張を通す交渉力が試されますね。

やはり文化の異なる国の企業と交渉を行っていくのは難しいものです。かといって迎合するわけにもいかない。主張を明確にしながらも、譲歩できる点はどこかを考えてみる。言うべきことは言いながらも相手のプライドは最大限立てる。それが交渉の肝ではないでしょうか。

ところで、自分の意見に自信がなければ何もできません。では、どうしたら自信をつけることができるか。私は自信をつけるには何か得意なことを深掘りして極めるのがいいと思っています。深掘りするためにはいろいろなことを調べることが必要になってくるので、周辺の情報や知識も入ってくる。そうすることでその人の全体的な能力がぐっと上がるものです。1つのことでプロになれればそれが強みになりますし、弱い部分は組織の中でカバーしあえばよいだけの話です。

乱世を乗り切れる組織とは、総花的に何でもそこそこできるジェネラリスト集団ではない。多様性を認め合い、1人1人が何か専門分野を極めたプロで構成された組織こそが生き残っていくはずです。