12億本を超える大ヒットとなった、こすると消せるペン「フリクション」シリーズ。手帳や資料の加筆、修正などさまざまなシーンで大活躍。“消える仕組み”を生かしたツールも登場。ボールペンからスタンプ、色鉛筆、そのフリクションの新・活用法とは──。

進化を続ける消せるペン

パイロット「フリクション」シリーズは、1000万本も売れれば大ヒットと言われる文具の世界で、累計12億2000万本(2014年12月)もの販売本数を達成した。

「リスケジュールなど予定の書き換えの多い手帳には、“消せる”シャープペンシルと同じ感覚で使え、書き直しが楽なこともあって、大ブレークした」と話すのは、文具王の高畑正幸氏だ。かつて高畑氏は、手帳の筆記はボールペン、変更がありそうな予定はシャープペンシルを利用していたが、今はもっぱらフリクションを愛用しているという。

フリクションは、06年に欧州で先行発売され、翌年に日本デビューを果たし、資料の加筆修正やメモ書きなど、さまざまなビジネスシーンで活躍してきた。発売当初は使うときにキャップを外すのが面倒だった。それが、乾燥しにくいインクの開発により、10年7月に発売されたノック式で解決。さらにインクの改良によって、発色も濃くなった。

「フリクションの最大のポイントは、カラーをキャップの先などについたラバーでこすれば簡単に消せ、消しゴムのカスが出ないこと。シャープペンシルは消しカスが気になり、他社の会議室などでは使いづらい。書いたり消したりを繰り返すクロスワードパズルや数独パズルを、電車の中で解くのにも便利。いろんな面で使いやすい筆記具です」(高畑氏)

ところで消える仕組みはパイロットが開発したインクにある。ラバーでこすった摩擦熱で修正したい箇所の温度が一定以上に達すると、無色透明になる特殊なインクなのだ。

「フリクションインキの基本成分は、発色剤、発色させる成分、変色温度調節剤の3つです。これがマイクロカプセルに包まれていて、専用ラバーでこすると、摩擦熱により65度以上にインキが温まり透明化します。紙の繊維に入り込んだインクも、温度が伝わればきれいに消えます」(パイロットコーポレーション営業企画部筆記具企画グループ・二宮清夏氏)

消した文字は、冷凍庫に入れたり、コールドスプレーを吹きかけてマイナス20度になると復活するという。