今、欲しい家の条件。その筆頭は、安全と安心だろう。地震や水害、火災にも強い家とはどんな家か――。調べてみると、日本ではすでに50年以上も前から高い耐震性や防火性を実現する工法が開発されてきた。その筆頭を走るのがレスコハウスのWPC(壁式コンクリートパネル)工法。驚くべき耐震性は、阪神・淡路大震災、東日本大震災、そして今年の熊本地震の際にも実証されている。これからの家を考える上で欠かせない工法への知識を、今、身につけておきたい。

命と財産を守るWPC工法

レスコハウス株式会社 代表取締役社長の近藤 昭氏

注文住宅、不動産、リフォーム、断熱材、介護・保育など幅広い事業を展開するヒノキヤグループは、コンクリート住宅の分野でも今、注目を集めている。グループ会社のレスコハウスが半世紀以上にわたって積み重ねてきたコンクリート住宅の高度な防災性能への関心が高まっているからだ。

同社が手がけるコンクリート住宅はPC(プレキャスト・コンクリート)パネルでつくられる。PCパネルとは、工場であらかじめ生産された鉄筋コンクリートのパネルで、その強度・耐久性に特徴がある。グループ代表の近藤昭氏に説明していただいた。

「PCパネルは従来の現場施工のコンクリートの1.5倍の強度を持っています。この差は水分量に起因します。現場ではコンクリートを型枠の隅々まで流し込むために、ある程度の水分量が必要となります。バイブレーターも使いますが、均一に施工するのは難しい作業です。一方、工場で製造する場合は水分量を極力抑えた固練りのコンクリートを打設し、型枠ごと高周波振動台にかけます。工場ですから天候にも左右されず、高強度で安定した品質のコンクリートを製造する事が可能なのです。水分量を抑えた密度の高いコンクリートは、強度はもちろん、耐久性も高く、その耐用年数は183年にもなるのです」

PCパネルを建築素材に使うだけでも効果が大きいことは明らかだが、レスコハウスでは、PCパネルの耐久年数をさらに生かす工法で住宅建築を行う。それが、WPC工法。PCパネルを強固に一体化した箱形に組み立てる工法で、同じような壁式構造の木造2×4住宅やパネル工法に比べて剛性が高い。

災害に強い住宅 過去の震災で証明

家の構造の剛性が高いと、どんな利点があるのか。ずばり、地震に強い。

阪神・淡路大震災で、まわりの家屋が倒壊しているなか、ガラス1枚割れなかったというレスコハウスの住宅(写真左が、全壊の木造住宅。右が被害なしのレスコハウス)。余震が続く中、避難所として5家族が寝泊まりしたという。この強さは、工場で製造されたPCパネルを「強固に一体化した箱形」に組み立てる、WPC工法によるものだ。

「今年4月の熊本の震災後、現地調査をすると、WPC工法で建てられた住宅27棟では、ガラス一枚割れていないことがわかりました。木造住宅ばかりでなく、鉄骨造の住宅にも被害が及んでいる中で、WPC工法の住宅にだけ被害がないのです。また、住宅の耐震基準は大地震のたびに改定されていますが、今回調べたWPC工法の住宅の中には、築20年を経過した住宅もあり、その住宅も無傷でした。これは特筆すべきことかと思います」

実は、以前の大震災においてもWPC工法の強さは証明されている。阪神・淡路大震災時には、レスコハウスが手がけた66棟のWPC工法住宅では家自体はまったくゆがまず、ガラスも割れなかった。他社が手がけたWPC工法の住宅総数495棟を含めても、全体の98%が無傷だった。

東日本大震災においても強さは実証された。津波で基礎下の地盤が削られ傾いたものの、WPC工法の家の構造体は無傷で残ったという。仮に災害にあっても家の構造自体が無事であることの意味は大きい。例えば自宅が火災の火元となったケースではこうだ。

「WPC工法の家は火災に強く延焼を防ぎます。あるお宅では、ご自宅から出火し、家の内部は全焼になったが、隣近所には被害が及ばなかった。しかも、家の構造自体は無傷で残ったので、内部のリフォームだけで住み続けることができました。鉄骨の場合でも、700度に達するとぐにゃっと曲がるものなのですが、WPC工法の場合は、構造体は崩れません」