キリン、サントリーの場合は、不運にも交渉途中で日本経済新聞にスクープされてしまった。これは水面下で交渉を進めてきた両社にとっても突然の出来事だったに違いない。ただ問題はそのあとだ。新聞がスクープしたのちに両社が交渉していることを正式に認めたため、交渉が表面化した。

「一般に、メディアに発表するまでの間に、交渉をしていくうえで絶対に譲れない前提条件を両社の間でしっかりと合意しておく必要があります。特に上場企業の場合は多くの株主に説明しなければならず、前提条件の合意のうえでないと最終合意や破談に至った際にあとのメンテナンスが大変になります」

佐山氏はこう指摘する。ではキリン・サントリーの経営統合交渉における前提条件になるものとはなにか。

佐治氏は破談の理由について「統合比率。お互い満足のいく統合をしないと新しい会社はうまくいかないので、結果的にしょうがなかった」と説明している。つまり株式の交換比率がこの統合の骨格、前提条件をなすものだったわけだ。

新聞報道によると、キリン側は昨年11月下旬、1対0.5程度の交換比率を提案した。これに対してサントリーは1対0.9という案を示した。サントリーの主張では、キリンは61.4%、サントリーは38.6%。キリンが提示した株式交換比率1対0.5では、持ち分は25.9%まで下がってしまうことになる。

対等での経営統合にこだわっていた佐治社長は11月のキリンの提案をみて、「サントリーを馬鹿にしているのか。交渉はやめや」と激怒したという。

「企業価値というものは、計算すれば画一的に算定できるように思われていますが、そんな簡単なものではありません。経営者の方は、どこかの専門機関に計算してもらえば算出されるものと考えがちです。これが大きな間違いで、会社の価値は見る人によってかなり違った結果になるのです」(佐山氏)