そうしたなか、ガバナンスの緩い公立の飲料メーカーは、次第に自分たちの人件費を上げていく。補助金漬けの民間の飲料メーカーも非効率な高コスト体質に変わり、本来、一本120円で生産されていたものが、200円、300円のコストがかかるようになる。統制価格で喜んで飲んでいる消費者は、そうした内情を露も知らない。

しかし、政府の財源は有限で、「安いミネラルウオーターをもっと寄こせ」といわれても、無尽蔵に公立の飲料メーカーをつくったり、補助金を投入する民間の飲料メーカーを増やせない。「それなら統制策を撤廃して改めて民間企業に市場に参入してもらい、競争原理を働かせながら適切な市場価格で質の高いミネラルウオーターを供給できるようにしたらいいのだが、既得権益を持った側の反発が強く、さまざまな規制や参入障壁を設ける。まさしくこれと同じことが、待機児童の問題で起きている」と鈴木教授は指摘する。

公立の園長の年収は1000万円台

実は保育所といっても、複数の種類に分かれる(図2参照)。利用者数が約216万人で最も多いのが「認可保育所」で、定員は20人以上などと国が定めた基準が設けられ、自治体から認可を受ける。また自治体が運営する「公立認可保育所」と、社会福祉法人や株式会社などが運営する「私立認可保育所」とに分かれ、運営費は国と自治体からの補助と、保護者が支払う保育料で賄われる。鈴木教授がいう公的な飲料メーカーや、補助金を受ける民間の飲料メーカーがこれらに相当する。

このほか、定員が6~19人の「小規模保育所」、保育士や研修を受けた人が1~5人の子どもを預かる「家庭的保育事業(保育ママ)」、保育者が家庭を訪れて保育する「居宅訪問型保育事業」、従業員の子ども用などの「事業所内保育所」がある。いずれも15年4月に施行された子ども・子育て関連三法に基づき、自治体の認可を得ることで一部補助を受けられるようになった。また、保育所と幼稚園の機能を併せ持つ「認定こども園」もある。

さらに、認可を受けずに補助金も得ていない「認可外保育所」が全国に8038カ所ある。ただし、自治体のなかには独自の基準を設け、合致した認可外保育所に補助を出しているケースもあり、その代表例が東京都の「認証保育所」や横浜市の「横浜保育室」だ。