物流まで一貫してやる

――さまざまな工夫をしておられますが、目下、生産上の課題は何ですか。

【針生】農地が足らないですね。とにかく農地を貸していただきたい。そこで「所有権」と「耕作権」と「やりがい権」という3つに分けたんです。東日本各地に農地をお借りしていますが、全部に舞台ファームの社員は行けない。「やりがい」を感じていただける方に権利を持ってもらい、そこを託してわれわれの代理センターとして巨大化していってほしい。

――物流や販売、そちらにも力を入れてらっしゃいますね。

【針生】現在、うちは日本の農業会社では画期的ともいえる運送会社の設立を法務局に申請中です。緑ナンバーを取得しようとしています。12月頃には認可が下りるのではないか、と思っています。いまも常時、5台のトラックでコンテナを動かしていまして、沿線上には仲間がいっぱいいます。

岩手県の北上には、取引先である大手コンビニチェーンのセンターもある。そこまで約130km。途中の農家から仙台の国分町で生産物を売りたいから運んでほしい、と頼まれても白ナンバーでは無理です。六次産業化はすばらしいんですけど、やるなら運送業までやらないと。経費はかかりますが、既存の運送会社に頼ってばかりでは情けない。最終的に生産から物流、販売までつなげば運賃も抑えられるでしょう。

――ということは株式会社がいいということですね。

【針生】結果的にそういうことになってきたんですよね。

――財務面のご苦労もおありでしょうが、補助金については、どのようにお考えでしょうか。

【針生】いわゆる「人間特区」の考え方がありますね。人材育成などに関する特区です。やっぱり、補助金というのはありがたい。ただ、えてしてお金をもらえるような感覚になってしまう。だったら、人間特区にして、ミッションをクリアして成功した人には補助金を成功報酬としてあげるというように、ちょっと形を変えて支給すれば成功を目ざして、皆、力を注ぐわけですよ。

ところが、いまは書類を書くことで補助金がもらえてしまうので、お金の怖さを知らない経営者は、ずぶずぶはまって大変になってしまう。成功報酬という考え方は、あってもいいのではないでしょうか。

――補助金は、縛りもきついですね。

【針生】はい、規制がちょっと堅すぎる。日付を切られたあとでなければ施設をつくってはダメとか、諸々の要件で縛られてスピード感がなくなる。補助金を当てにすると事業のスピードが落ちるので、結局、補助金なしでやるケースも多いのです。書類を出したら事前着工していいとなれば、もっとスピード感が出るのですが……。