第三のポイントは、じっとしていないこと。私がプレゼンするテーマでは、とりわけ扱うデータが多いですから、資料を配るようにしています。すると聞き手の顔は下を向きがちです。どうすれば顔を向けてもらえるか。そう考えて、マイクを持って場内を歩き回るようにしています。演台でじっとしていると聞き手の視線は固定されてしまいますが、場内を歩くと視線が動く。小さい会場では、大きなジェスチャーも交えます。体全体を使うことで、聞き手の関心を物理的に惹きつけるのです。

「四次元の目」で話題を掘り下げる

そして、プレゼンにおいて何よりも重要なのは、自分の信念を話すこと。人間は信念を語るとき、自分の体からオーラが出ます。そのオーラでお客様の信頼を勝ち取るのです。自分なりのロジックを構築し、納得した内容を準備することができれば、よどみなく話すことは難しいことではありません。

自分なりのロジックを構築するには、世の中の変化に敏感になることです。私は書店に通ったり、テレビで国際ニュースを見たりして、金融や経済の動きを、歴史的な視野でとらえられるように意識しています。私はそれを「四次元の目で見る」と表現しています。

ある企業を見るとき、その企業を単独で見るのではなく、それが含まれるより大きな集合としてとらえることが大切です。企業には、それが属する業界があり、国と地域があり、さらにそれらを含む世界があります。その最大の集合である「世界」から、長い時間軸で日本、業界、企業を見ていくことで、将来を見通す目が養われるのです。なお、この手法については拙著で詳しく紹介しています。よろしければご覧ください。

準備でのポイントは、複数の結論を準備しておくこと。準備ができていれば心に余裕が生まれ、結論から話したくなります。もしプレゼンの項目が10個あれば、10個の結論を資料に書いておく。途中で話が脱線しても、結論がレジュメに書いてあれば、軌道修正がしやすい。同時に、だいたいの時間配分も想定しておきましょう。緊張すると、余計なことを話してしまい、最初の項目が長くなる。そうすると時間が足りず、慌ただしく終わることになります。これでは悪い印象だけが残ります。

私の場合、持ち時間が90分であれば、最初の10分間で「結論」を述べます。それから10分から20分まで世界経済の変化を語り、20分から40分ぐらいまでは旬のトピック、今ならアベノミクスの現状について話します。40分から50分ぐらいまではシェール革命とインフレ。50分から70分までは「フラット化する世界」の説明。そこから資産分散の話を10分。最後に日本の経常収支の話をして、ちょうど90分です。