A4サイズの紙をスーツのポケットに

私のスーツの内ポケットには、いつも黒革の手帳が入っている。見開きの左が週間スケジュール、右が余白というオーソドックスなタイプ。秘書から打ち合わせや会食などのアポイントメントが伝えられると、左に相手の名前と時間・場所を、右側には補足的な事柄やプライベートな予定を記す。

大阪あるいは東京本社にいる場合は、朝8時頃に出社。まず、腹筋台と足踏み器で5~10分トレーニングをする。そして「タバコ部屋」と呼ばれる役員ミーティングルームで何人かの役員と懇談。やがて9時5分前になると、秘書の皆さんも一緒にラジオ体操だ。

こうして1日が始まるわけだが、こなすべき予定は平均して4、5件。あまり窮屈にならないように30分~1時間単位でセットしているが、優先順位をつけにくい仕事や相手も少なくなく、自然と手帳の予定欄は埋まってしまう。ただし最近では、夜の9時半になったら会食も懇談も切り上げて、自宅か宿泊先に帰るようにしている。

手帳は日に何度となく開いて確認している。それだけに、スケジュール管理に使うだけではもったいない。そこで私は、経営トップとしての所感や読書などで知った金言、心を打たれた言葉も手帳に書き留めるようにしてきた。

社員向け手帳を使用。税務の基礎等を収録。万年筆の側面に記した「心を、つなごう」は社の経営ビジョン。

2015年の正月には、手帳の冒頭に「創意工夫とイノベーションで、スピードを合言葉に何事にも対処してもらいたい。そして、今年60周年は売り上げ3兆円。凡事徹底のさらなる推進」と決意を明記している。

ページをめくると「不変の価値基準として信・義・仁といい、信は人の信頼、社会の信頼を裏切らずに守ることである。義とは自分の良心に照らして、正しいことを行うことである。仁は私利私欲によらず、相手の立場になって物事を考える思いやりの精神のことである」という『論語』の解釈もメモしてある。これで自然と頭にも刻み込まれ、自らの姿勢を正すことにつながる。

写真も挟める。今は、当社も関わるウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の公演の際に撮った、ラトビア生まれの若手指揮者、アンドリス・ネルソンス氏とのツーショットを携帯している。