地元・英国の株価よりも日本の株価が回復しないワケ

ところで、景気悪化は企業業績の悪化要因であるため、世界の株価は英国の国民投票直後に急落したが、数日で反発した。これは英国発の景気悪化懸念で、各国の金融政策や財政政策が景気の下支えに動くとの期待感によるところが大きい。なかでも英国のFTSE指数(ロンドン証券取引所における株価指数)は1週間で国民投票前の水準を上回った。これに比べると日経平均株価は同時期に下落分の半分程度しか回復していない。

Yooco Tanimoto=イラスト

当事者である英国より日本の株価反発が弱い理由は円高にある。円は国民投票後、対ポンドで2割近く円高となっただけでなく、対ドルでも1割近く円高となった。円高になると日本の製品は海外で割高となって輸出競争力が低下することに加え、外貨建ての売り上げを円に換算したときに収益が目減りする。他方で円高には輸入物価が安くなるプラス効果があるのだが、マイナス効果を相殺するには至らない。

もっとも、円高は国民投票以前から進行しており、英国のEU離脱だけがその原因とは言えない。また、日本企業の多くは英国事業の業績悪化が、会社全体の業績に与える影響は限定的としている。そもそも英国がどのようにEU離脱を実現させるか明確ではないため、この問題が日本の為替や株価に及ぼす影響については、より長い視点で見極める必要があるだろう。

 
山崎 加津子(やまざき・かずこ)
大和総研経済調査部の主席研究員(欧州担当)。英国がブレア旋風で、EUがユーロ導入で輝いていた1998~2000年にドイツに駐在。
 

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