アベノミクス効果などによって日本の景気は緩やかな拡大が続く見通しではあるが、海外は予断を許さない。海外経済をより注意深く見ておく必要があると、大和総研の熊谷亮丸チーフエコノミストは指摘する。

熊谷亮丸(くまがい・みつまる)
大和総研執行役員 調査本部副本部長(経済調査、金融調査担当)。チーフエコノミスト。1989年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。同行調査部などを経て、2007年大和総研入社。15年より現職。東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(旧興銀より国内留学)。

「海外のいろいろなところに“地雷”が埋まっていて、2016年の日本経済は海外経済次第という状況にあります。世界全体がグローバリゼーションでつながっている現在、海外経済の動向はストレートに日本経済や普段のビジネス活動に影響を及ぼします。仕事や生活、資産運用を考える際に海外経済の知識が必須になっているのです」

このような認識を踏まえ、大和総研のエコノミスト陣が世界経済を理解するための基礎知識と今後の展望を解説しているのが本書である。

景気が減速しバブル崩壊のリスクが存在する中国経済や、米国経済とFRBによる金融緩和策の出口戦略など、本書には世界経済に関する主要なトピックが網羅されている。

経済学の専門家ではない一般のビジネスパーソンが世界経済のニュースを見聞きしても、論者によって異なる主張に混乱したり、下手をすると特定の言説をお告げのように信じ込んだりする人もいる。世界経済の動きはどうしたら読めるようになるのだろうか。

「経済や市場を見るうえで重要なのは自分で情報を仕入れてシナリオを組み立て、事後にどこが正しくてどこが間違っていたのかをチェックして修正をはかるというサイクルを回すことです。これを繰り返すことによって、先を読む力は着実に向上します」

ポイントは、まず全体像をつかむこと。そして各国の政治・社会構造を理解しておくことだという。

 

たとえば中国経済を見ると金融面での過剰融資が1000兆円、過剰設備が400兆円以上あると推定される一方で、中国政府は600兆円から800兆円の財政出動が可能という構図がある。中国の政治はどうか。集団指導体制になっているので、抜本的な改革は実施が難しい。

このように見ると「1~2年は中国政府のカンフル剤で持つが、中長期では極めて慎重な見方が必要」といった見通しが持てるわけだ。

「全体の構図を押さえたうえで、いま起きている個々の事象を見ていくことが大切。そのために必要となる情報が、この一冊にまとまっています」