提言:子育て世代が望むのは、親の協力なしに産めないような社会ではない

●TVディレクター、ライター 藤村美里さんから

政府が「3世代同居の支援策」を打ち出したと聞いて、驚いた人は少なくないと思います。それも、少子化対策の一環として。子育て世代からの反対意見は、ほかに取るべき少子化対策があるはず、順番が違うという憤りが理由です。

昔のように3世代同居に戻れば、介護施設や保育園を増設せずに済む、そんな単純な問題ではありません。3世代同居が減ったのは、今の社会の形に合わなくなったから。祖父母の協力はありがたいものですが、同居はトラブルが多く、近居も親世代が持ち家か、首都圏か地方か、と格差を生むことにもなります。

今、3世代同居を推進したら、増えるのは母方祖父母(妻の両親)との同居でしょう。家事や育児を手伝ってくれる実母がいたら、女性は安心して働くことができます。

でも、育児のパートナーが夫ではなく実母になってしまいそうですし、共働き子育て世代が集中する大都市圏のマンションに3世代同居して、本当に子どもが増えるのかも疑問です。

そもそも、3世代同居を推進することで目指すのは、どんな社会なのでしょうか。

欧州連合統計局の統計によると、3世代で同居をしている世帯は欧州のほとんどの国で5%以下、少子化対策が成功している北欧のフィンランドやスウェーデンでは1%にも届きません。

今の子育て世代が望んでいるのは、仕事も育児も夫婦で協力してできる社会。親の協力なしには子どもが産めないような社会ではないのです。

女性活用で労働力不足を補いつつ、両親を介護し、定年後は孫の面倒を見る。そうして限界まで働かざるを得ない社会が、政府が目指す社会なのでしょうか。日本が、本当の意味で女性が輝ける国になることを切望します。

撮影=市来朋久