ワーク以外のライフをどうすればいいのか、分からなくなっている?

かつて、日本の企業は『大きな家族』のようなものでした。住まいも用意され(社宅、最近はずいぶん減りましたね)ライフの多くの部分を企業が面倒をみていました。個人商店のような小さな企業でも、賄い付き、住み込み可などの形態で雇用していたケースは少なくなかったのです。

いま、そんな企業は少なくなりましたが、形を変えて、ライフの部分の面倒を見続ける企業は少なくありません。こう書くとピンとくる人もいるでしょう。企業が従業員に行う多くの支援は、実はライフの部分をサポートするものが多いのです。

ただ、いまの時代、画一的な生き方をする人ばかりではなく、企業の側の対応もさまざまです。ある企業では「ライフのバランスを取るために最大限の支援をしますよ」といい、他のある企業では同じことに対して「それは個人的なことなので特段の支援をすることではない」と言ったりします。また同じ企業でも、子育て支援のようなことは社員のライフとして支援するが、部活動のような趣味的なことは支援しないということもある。そう。ケースバイケースのワークライフバランスを取ることは、仕組みとしては未だに難しいというのが、現実なのかもしれません。

冒頭で書いた新人の質問に対し、私は上記のような説明をした上で、以下のセリフを付け加えました。

「この話に、特にオチはないよ。本当は人それぞれでいいのだけど、人それぞれに対応する仕組みを作っていると、手間もかかるし、結果的にコストもかかってしまう。なので『極めて標準的な“ワークライフバランス”を提示し、それをサポートする』というと、効率がいい。そういう考え方も、もしかしたらあるのかもしれない。まあ、これも一つの考え方、だけどね」

サカタカツミ/クリエイティブディレクター
就職や転職、若手社会人のキャリア開発などの各種サービスやウェブサイトのプロデュース、ディレクションを、数多く&幅広く手がけている。直近は、企業の人事が持つ様々なデータと個人のスキルデータを掛け合わせることにより、その組織が持つ特性や、求める人物像を可視化、最適な配置や育成が可能になるサービスを作っている。リクルートワークス研究所『「2025年の働く」予測』プロジェクトメンバー。著書に『就職のオキテ』『会社のオキテ』(以上、翔泳社)。「人が辞めない」という視点における寄稿記事や登壇も多数。