人を思いやれるがゆえに、思いやりがほしくなるという悩み

「私、どうしても婚活相手をいつもいる仲間と比べてしまうんです。そうすると踏み切れなくなってしまうんです」「えっと……いつもいる仲間とはどなたのことですか? それと、どういうところが見劣りしてしまうのですか?」

彼女は私の目を見据えて言った。「登山仲間です。山登りは、自分のことだけ考えていると、誰かが命を落とす危険があります。ですので、体調の悪い人や初心者が無事についてこられているか、天候など安全面に問題はないかなど、いろいろと気を配ります。特に、男性は重たいものを積極的に持ってくれたり、引っ張り上げてくれたりと、すごくサポートしてくれるんです。まあ、そういう人たちはみんな結婚しているんですけどねぇ……」

なるほど、山ガールが魅力的であるのと同様に、山ボーイも恐ろしく細やかな気遣いができる素敵な男性たちなのだ。だから、婚活男性のあらが見えてしまい、交際に踏み切れないのか。

「ミホコさん、婚活は平地でやるので、気遣いをしたくても山のような機会がありません。山ボーイと比べたら酷です」「そうですよね……」「だからといって、気遣いができない男性はダメですよね。それならば、ミホコさんの示す気遣いを理解して感謝してくれる相手を選ぶというのはどうでしょうか。そういう相手は、ミホコさんが大事にしている思いやりや気遣いを大切にしてくれます。大切にしているものが一致することで、いい関係が作れます」

彼女は、私の提案を受け入れてくれた。そして、7歳年下の男性との結婚を決めた。彼はいつも機嫌の良い笑顔で接するミホコさんの魅力に気づき、「こんなに自分を大切にして、愛してくれる女性はもういない」とメロメロである。

人は相手に、自分が示すのと同じレベルの思いやりや気遣いを求めがちなものだ。そうではなく、思いやりや気遣いを察し感謝してくれる男性を選ぶという発想に立てば、結婚も現実のものとなりやすいのだ。

婚活に限らず、相手に求めるものが多くなると、自分の基準に合わないからといって切り捨ててしまったり、逆に重く感じられたり敬遠されたりしてしまう。見返りを期待しないということが、すべての人間関係を良くするポイントかもしれない。

大西明美
婚活アドバイザー。結婚相談所を経営。1977年大阪府生まれ。東京都文京区在住。過去20年で延べ4万3000件の恋愛を研究してきた婚活指導の第一人者。小中学校ではイジメを受け友達がいなかったため、周囲の人間関係を観察することを目的にして登校を続ける。特に恋愛に注目してコミュニケーションを学ぶ。高校生のとき、初めてできた友人に恋愛相談を持ちかけられ、日頃鍛えた人間観察眼を生かしたアドバイスを行い、無事に解決。それをきっかけに恋愛相談が立て続けに舞い込むようになる。婚活指導を通して、5年間で200組以上のカップルを成婚へと導いている。
著書に『となりの婚活女子は、今日も迷走中』(かんき出版)がある。