先生のお手本


件名:異動のご挨拶
プレジデント社
赤池 淳一様

いつもお世話になっております、八重川です。※1
私事ですが、9月1日付で、マーケティング本部宣伝部よりマーケティング本部広報室への異動となりました。
宣伝部在職中は赤池さんをはじめ、「dancyu」スタッフの皆さまには大変お世話になりました。
本当にありがとうございました。
※2毎月のタイアップ連載では、数多くの飲食店での撮影にご協力いただきました。
この4年間で特に印象深かったのは、本年5月のニッカウヰスキー余市蒸溜所と宮城峡蒸溜所の撮影です。
企画の決定から撮影、原稿制作、校了まで非常に過密な※3スケジュールでした。
厳しい日程の中、ニッカウヰスキーのブランド価値向上につながる素晴らしい広告に仕上げていただいたことは忘れられません。いつも弊社のことを考えてくださるスタッフの皆さまのおかげだと、心より感謝しております。※2(「毎月の~感謝しております。」まで)

「宣伝」と「広報」、表現の※3仕方は違いますが、“お客様に商品の価値をお伝えする”本質※3は変わらないと思っております。
赤池さん、スタッフの皆さまから学んだ「相手のことを考える」という心構えを仕事に活かし、広報部門でも数多くのメディア様に取り上げていただけるよう頑張ります。
このご縁を大切にしたいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。※4


【先生が指摘する4つのポイント】
(1)堅苦しい決まり文句は不要
定型句は大半の人が目で追うだけで、頭に入っていません。「簡単な挨拶+名前」で、文章を読む態勢をつくってもらいやすくなります。
(2)一文は60字以内に収める
一文が長い文章はメールでは非常に読みにくいです。読みやすい一文は60文字以内。強調したい一文は、さらに改行しましょう。
(3)カタカナ語はできるだけ避ける
カタカナ語は便利ですが、軽く見えて文章を安っぽくします。日本語を知らない人だと思われやすいので、言い方を換えることをすすめます。
(4)今後もつながっていたいことを伝える
異動の挨拶は、異動後もつながっていたい相手に送るもの。相手から学んだことを具体的に書き、この先もご縁を大切にしたい気持ちを伝えて。

●失礼にならないギリギリの線を狙いたい

異動の挨拶は、同じ時期にたくさん受け取る文章の一つ。埋もれてしまわないように、きらりと光るものを届けたいですね。

八重川さんの挨拶文は、きれいにまとめられているのですが、どこかで読んだような……。相手の方は立場上、手紙やメールをたくさんもらう方ですよね。だからこそ、ほかの人と違う表現で、一歩踏み込む必要があります。

「いただいた」「いただきたい」といった固い言葉をあえて崩し、失礼に当たらないギリギリのところで、友達とのやり取りのような表現を、随所に入れましょう。文中に相手の名前が入っているのはとてもいいことです。誰でも自分の名前を見るとドキッとして、特別な文章が届いたという気持ちになります。相手の立場が上だからこそ、表現を演出し、喜ばせましょう。

中島泰成
代筆屋、行政書士。小説『代筆屋』(辻仁成著)をきっかけに代筆業をはじめ、テレビ、新聞などで紹介。「告白」「復縁」「お礼」「謝罪」「遺言書」など、あらゆる分野の相談を受ける。著書に『プロの代筆屋による心を動かす魔法の文章術』。

構成=塩月由香