物の怪にとらわれたかのような、怪しく激しい踊り。一方でノーブルさを漂わせる独特の世界観。彼らのダンスから、あなたは何を感じるだろうか? 日本のダンスシーンに革新をもたらし、世界から注目されるダンスカンパニー「DAZZLE」主宰、長谷川達也さんに話を聞いた。

「DAZZLE」主宰の長谷川達也さん。衣装協力MUBAC (ムバク)

「ストリートダンス」という言葉に、皆さんは何を想像するだろうか。

おそらく多くの人がヒップホップを踊る若い男のコたちを想像するのではないだろうか。私もそれを想像していた。初めて彼らのダンスを見るまでは。

「DAZZLE」――そのグループ名は“惑わす”“幻覚させる”という意味がある。ある人から「とにかく彼らの舞台を一度ご覧になってください。ストリートダンスの定義が変わりますから」と薦められ、初めて観たのが彼らの代表作『花ト囮(おとり)』だった。

「DAZZLE」の代表作『花ト囮(おとり)』から。彼らのダンスは、物語の上に構成されている。ときには台詞が、舞台演出として使われることも。作品は、ダンスというより総合的な舞台芸術を観るようだ。

なんだこれは。まさに幻想の世界。一瞬で日本古来の民話の世界に引きずり込まれた。「キツネの嫁入り」をモチーフに、独創的なダンスが息をつく間もなく繰り広げられる。

赤と黒の光。白装束の人々。怪しさ。哀しさ。舞台はそれらと音楽とが渾然一体となって、激しく美しく、計算されつくしたダンスと調和する。幽玄で物語性のあるステージ。それがダンスカンパニーDAZZLEの真骨頂だ。

DAZZLEは主宰の長谷川達也を中心に、8人の主軸メンバーで構成される。彼らは、いったいどのようにしてこの舞台を作り上げるようになったのか。リーダーとしてカンパニーを牽引し、構成や演出、振り付けを手掛ける長谷川に、まずはその出自を聞くことにしよう。